タッチ・センサが機器メーカーから注目を集めるきっかけになったのが,任天堂が2004年12月に発売した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」と,2006年3月に発売した「ニンテンドーDS Lite」である。タッチ・パネル付きの画面に表示されたゲームのキャラクターを,ペンでなぞることで操作できる。例えば画面上の犬をペンでこすってなでるといったような,従来のボタン操作にはなかった新たなアプリケーションを生み出した。

 2007年6月に米Apple Inc.が発売した「iPhone」も,他の機器メーカーをうならせた。マルチタッチ,いわゆる多点検知をするタッチ・センサを使うことで,例えば撮影した写真を2本の指で自由自在に拡大/縮小できるようにした。ユーザーに簡単な操作性だけでなく,使う“楽しさ”を提供した。

 「ユーザーに何らストレスを感じさせないインタフェースの実現を目指した。ボタン操作やタッチ・ペンではストレスを感じることが多い」(アップルジャパン プロダクトマーケティングiPod+iTunesプロダクトマネージャーの一井良夫氏)。こうした機器などが,タッチ・センサを使ったユーザー・インタフェースが機器の差異化のツールとなることを示したのである。

利用環境が今後充実

 とはいえ,タッチ・センサはまだまだニッチな存在。普及への道のりを歩みだしたばかりにすぎない。

 タッチ・センサの採用は,携帯機器を中心に今後急速に広がっていく(図1)。機器メーカーにとって,タッチ・センサの利用環境はますます充実していくからだ。

図1 タッチ・センサは至る所に タッチ・センサは以前,業務用機器や産業機器,PDAという限られた用途にだけ使われていたが,2003年ごろからビデオ・カメラやデジタル・カメラ,カーナビなどで採用例が出た。ニンテンドーDSやiPhoneの登場をきっかけに,今では携帯機器を中心にさまざまな民生機器に搭載され始めている。今後は冷蔵庫や電子レンジといった白物家電での採用例も増えていく。
図1 タッチ・センサは至る所に タッチ・センサは以前,業務用機器や産業機器,PDAという限られた用途にだけ使われていたが,2003年ごろからビデオ・カメラやデジタル・カメラ,カーナビなどで採用例が出た。ニンテンドーDSやiPhoneの登場をきっかけに,今では携帯機器を中心にさまざまな民生機器に搭載され始めている。今後は冷蔵庫や電子レンジといった白物家電での採用例も増えていく。 (画像のクリックで拡大)