三洋電機は,2008年度(2008年4月~2009年3月)の業績予想を下方修正した(PDF形式の発表資料)。連結売上高は前年度比5.8%減の1兆9000億円,営業利益は同60.6%減の300億円,純利益はゼロとする。前回予想から売上高は1200億円,営業利益は200億円,純利益は350億円,引き下げた。2008年11月から半導体や電子部品の受注にかげりが見え始め,同12月に大きく落ち込んだという。代表取締役副社長の前田孝一氏は「この三十年,経験したことがないほどの急激な落ち方。『百年に一度』(の大不況)と言われるが,そのスピードを実感している」とうなだれた。好調を維持していた2次電池や太陽電池も円高の影響で利益率が落ち込んでいる。2次電池事業は上期に比べ下期の営業利益が30%程度,太陽電池事業では10~20%程度,減少する見通しという。

半導体の海外工場3カ所閉鎖へ

 下期に赤字を解消する計画だった半導体事業では通期で200億円程度の営業損失を計上する見込み。これを受けて三洋電機は,半導体事業で人員削減を含む構造改革に着手する。パワー半導体事業に経営資源を集中させ,システムLSI事業を縮小する。「回復をただ期待しているだけでは生き残れない。固定費を削減して損益分岐点を200億円引き下げる」(前田氏)とし,売上規模が縮小しても利益が出る事業体質の構築を目指す。一連の構造改革費用は80億円(既に実施した分が15億円,今回発表分が65億円)を予定している。

大阪本社で記者会見が行われ,東京本部ビルにその模様がテレビ会議システムを使って伝えられた
大阪本社で記者会見が行われ,東京本部ビルにその模様がテレビ会議システムを使って伝えられた (画像のクリックで拡大)

 人員削減規模は正規/非正規を合わせて国内で800人,海外で400人の合計1200人。国内では,半導体事業に従事する5000人の正社員を対象に明日(2009年1月16日)から退職希望者を募る。この希望退職で500人程度を削減する予定。希望退職者には退職金を割り増しで付与するという。また,システムLSI事業からパワー半導体事業や電池事業へ,グループ内での人員配置転換も150人規模で実施する。

 生産拠点の再編も進める。半導体事業の海外工場は,2008年10月に韓国工場を閉鎖し,現在7カ所だが,これを4カ所に集約する。同社はフィリピンやベトナムでの生産強化を進めているといい,工場閉鎖はタイや中国など,そのほかの地域が検討対象になっているとみられる。また,国内で手掛けている後工程に関しては海外への移管を積極的に進めるとした。前工程の国内3拠点については今回の再編対象には含めていないという。

HEV用電池の量産は前倒しの可能性

 半導体以外の事業は,全般に状況は厳しいものの,大きな損失は出ない見込み。「家電は2008年度下期にトントン(損益ゼロ)。荷物にはなっていない。電子部品も若干の黒字を確保できそうだ」(前田氏)。

 黒字化が遅れた半導体事業は「2009年度に赤字脱却,2010年度には100億円規模の黒字にしたい」(前田氏)とする。全社の経営目標は「2009年度に布石を打ち,2010年度に効果を見込む。旗は下ろさない」とし,中期経営計画で掲げた2010年度の目標値は下方修正しなかった(2008年5月の発表資料:PDF)。設備投資も2008~2010年度の3年間で3600億円という当初計画通りの規模で進めるという。ただし,ハイブリッド自動車向け2次電池への先行投資に資金を割き,その分をほかの事業で縮小するなど,提携先のパナソニックの意見を容れながら投資内容を見直すとした(Tech-On!関連記事1同2)。

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