Stringer氏(右)による基調講演の様子(写真はCEAが提供)
Stringer氏(右)による基調講演の様子(写真はCEAが提供)
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 ソニー 会長兼CEOのHoward Stringer氏の「2009 International CES」初日の基調講演を聞いて,筆者は心底,驚いた。まるでソニーの文化と違うことを言ったからだ。

“supporting open technologies because consumers expect services to work with any device”
「消費者は,あるメーカーの機器と異なるメーカーのサービスに互換性があることを期待しています。このため,標準規格(オープン・スタンダード)への対応が望ましいのです」

“service-enhanced philosophy from the initial design of products to the retail level”
「消費者は,製品の価値を,ネットワーク上のサービスとコンテンツによるユーザー体験のクオリティに基づいて評価しています。われわれ自身が“service-enhanced industry”に完全に移行しなくては時代遅れになります」

 筆者の考える「こうであってほしいソニー」は違う。圧倒的に違う技術力をもって他を引き離し,孤高のフォーマットであっても,他社にぐうの音も言わせない“ものすごいもの”を作る。それこそがソニーではないか。標準規格や互換性は大事だが,他と同じようになってはだめだ。独自の視点と技術を高く掲げ,「こんなものが欲しかったんだ。ソニーさん作ってくれてありがとう」とユーザーをして言わせるものを作るのが,昔も今も変わらないソニーの使命である。

 オープンだけのソニーなんていらない。そんなものは他社に任せればよい。今回のブースで目に付いたのが“21型の有機ELテレビ”と“曲がる有機EL”程度というのもまったく寂しい。他を突き放す,尖った技術をわれわれに見せつけて,感動を与えてほしい。大事なのはサービスより「感動させる技術」である。