NECエレクトロニクスが実演に利用したUSB3.0のボード。右側の黒いチップがUSB3.0のPHYを実装したLSI。
NECエレクトロニクスが実演に利用したUSB3.0のボード。右側の黒いチップがUSB3.0のPHYを実装したLSI。
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富士通マイクロエレクトロニクスのボード。
富士通マイクロエレクトロニクスのボード。
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 「2009 International CES」では,2008年11月に仕様が固まったばかりのUSB3.0(SuperSpeed USB)について,少なくとも5社が送受信ボードをそれぞれ試作し,通信の実演を披露している。LSIを既に起こしたメーカーやIP(intellectual property)のライセンス提供を狙う企業など,想定するビジネスモデルはさまざまである。

 USB3.0のデータ伝送速度は5Gビット/秒。USB2.0の480Mビット/秒の10倍超である。このほか,ポーリングなどのオーバーヘッドをなくしてユーザーの待ち時間を短縮する「Sync-N-Go」と呼ぶ仕様の採用や,USB2.0との後方互換性を確保したこと,給電機能について流せる電流を従来の約2倍にしたことなども特徴である。

 今回のCESでUSB3.0の実演を披露したのは,富士通マイクロエレクトロニクス,米Fresco Logic社,NECエレクトロニクス,米PLDA社,米Symwave,Inc.の5社。ただし,Symwave社はブースでは公開せず,近くのホテルでの実演である。

 既に,USB3.0の物理層(PHY)の仕様をLSIに起こしたのが,NECエレクトロニクスと富士通マイクロエレクトロニクス,そしてSymwave社の3社である。富士通マイクロエレクトロニクスとSymwave社は共に,ストレージ用インタフェースがUSB3.0の最初の用途だと見る。「最近はストレージのSATAインタフェースの高速化が進んでいるが,USB2.0がデータ伝送のボトルネックになって実際には性能が上がっていなかった。USB3.0ならこの状況が大きく変わる」(Symwave社)。USB3.0をSATAと組み合わせて利用すると,今度はSATAの上限250Mバイト/秒という仕様がボトルネックになってしまう。

 Fresco Logic社とPLDA社はFPGAを利用したソフトウエア・ベースの実装を用いて通信デモを公開した。Fresco社も大容量メモリ装置へのデータの書き込みや読み出しを実演している。この2社は,自社ブランドでの製品化は行わず,IPの提供をビジネスモデルとする。

Symwave社が製品化で先行か

 製品化時期について,USBの仕様策定を進めるUSB-IF,USB 3.0 Promoter Group議長のJeff Ravencraft氏は「2010年の早い時期になるだろう」と予測する。実演した多くのメーカーも同じ見通しを示したが,Symwave社だけはやや早めの製品化を予定する。「今はLSIはPHYだけで,ホスト・コントローラはFPGAで動かしているが,2009年1月中にもこれらを1チップ上に集積したLSIの試作が出来てくる。できれば,2009年のクリスマス商戦には製品化を間に合わせたい」(Symwave社)という。