IDesia社 Founder & CEOのDanny Lange氏(左)と,同社 ChairmanのGideon Barak氏(右)
IDesia社 Founder & CEOのDanny Lange氏(左)と,同社 ChairmanのGideon Barak氏(右)
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心電図認証のデモの様子。電極に両手の親指を触れることで測定する
心電図認証のデモの様子。電極に両手の親指を触れることで測定する
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上の画像の認証部の拡大画像(IDesia社の資料から)
上の画像の認証部の拡大画像(IDesia社の資料から)
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 指紋認証,静脈認証,網膜認証――。個人に特有の生体情報を利用して個人を識別する認証技術は,既に幾つかの方式が知られている。イスラエルのベンチャー企業IDesia社は現在,これらに続く新たな認証方式を開発している。それは,「心電図認証」である。

 心電図は,心臓の拍動に伴う心筋の活動電流を記録したもの。「心電図の波形の一部には,人によって特有の部分がある」(IDesia社 Founder & CEOのDanny Lange氏)ことを利用した。同社が開発した心電図認証技術による,個人の識別精度は「99%」(同氏)という。

 認証方法に心電図を利用する利点についてDanny Lange氏は,低コストや小型にできる点などを挙げる。今回の心電図認証技術は,約1ドルで機器に実装できるという。「指紋認証方式の場合の約1/3と安い」(同氏)。

 低コストにできる理由は,その構成の簡易さにある。心電図の計測には,右手の親指用と左手の親指用の二つの電極さえあれば良いという。「機器の適当な個所に,厚さ20μmの導電性塗料を塗布した電極を二つ用意するだけ。従来の認証方式のように,専用のセンサやカメラなどを必要としない」(Danny Lange氏)。

 こうした構成の簡易さのため,低コスト化だけでなく小型にもできる。「スマートカードのように,これまで認証技術を搭載できなかった小さな製品にも搭載可能だ」(Danny Lange氏)とする。

 二つの電極で測定した心拍データは,専用の認証エンジンによって解析する。ノート・パソコンなどに心電図認証を実装する場合は,パソコンのマイクロプロセサを利用してソフトウエアで解析できる。ただし,今回の技術はスマートカードのような製品への搭載も視野に入れているため,「スタンドアローン型の機器でも使えるように,現在,専用ASICを開発している」(Danny Lange氏)。センサだけの場合は,前述のように約1ドルで機器に実装できるが,専用ASICと組み合わせる場合は「2ドル程度」(同氏)になるという。

 IDesia社は現在,世界のさまざまな機器メーカーに対して今回の認証技術のプロモーションを進めている段階である。「既に,自動車メーカーやパソコン・メーカー,携帯電話機メーカーなどから強い興味を示してもらっている」(同社)。

 さらに,ヘルスケア事業者からの興味も集まっているという。認証という利用方法ではなく,継続して心電図を測定し続けることで,日常の簡易的な健康管理に利用できる可能性があるためだ。

 IDesia社は,2009年1月8日から米国ラスベガスで開催される「2009 International CES」において,心電図認証技術を出展する予定である。

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