超小型プロジェクターの分解もいよいよ大詰め。「MPro110」の光学モジュールの分解を残すのみとなった(図1)。さっそくモジュールから,表示素子のLCOSと光源の白色LEDを取り外す。
駆動用LSIのロゴから判断すると,このLCOSは台湾Himax Technologies社製と考えられる(図2)(分解その3)。サイズは0.55型で,画素数は640×480画素である。光源の白色光をRGBの3色に分離する光学系が見当たらないため,LCOS側にカラー・フィルターを備えているようだ。
白色LEDは,パッケージや電極の構造などから,「米Cree社の『XLamp』だろう」(あるLEDメーカーのマーケティング担当者)とみられる(図3)。XLampは品種によるが,明るいもので約100lmを出力できる。プロジェクターの光学系の光利用効率(入射光の強度に対する出射光の強度の割合)は,一般に10%前後とされる。MPro110が投射する映像の明るさは公称10lmほどなので,光利用効率を10%と仮定すると,光源の明るさは100lm前後という計算になる。この値はXLampの明るさと一致する。
樹脂を使いPBSを多機能化
光学モジュールは,主に三つの光学部品で構成されている。このうち,技術者が強い関心を寄せたのが,樹脂製のPBSである。「めずらしい形状をしている。これはおもしろい」(プロジェクターに詳しいある技術者)。PBSの表面をさまざまな形状にすることで,特定の偏光成分を透過/反射する本来の機能に加えて,複数の機能を盛り込んでいる(図4)。例えば,光源からの光をLCOSのアスペクト比に合わせる機能や,投射レンズの一部としての役割を兼ねているとみられる。「加工性に優れた樹脂だからこそできる部品」(あるプロジェクターの光学系研究者)。PBSに複数の機能を盛り込むことで,光学系の小型化と簡素化につなげている。
残りの二つは,投射レンズとフレネルレンズ状の光学部品である。フレネルレンズ状の光学部品は,LEDからの光を集め,かつ平行光にする働きがあるようだ。この光学部品は黒いホルダーに,反射型の偏光板とともに固定されている(図5)。「偏光板で反射した光をLEDに戻し,LEDチップの底面で反射させ,もう一度光路に戻して光を再利用する狙いがあるのではないか」(前出の研究者)とみる。
日経エレクトロニクスは2008年12月29日号に,超小型プロジェクターの分解記事を掲載する予定です