LG Electronics社Middle East&Africa Regional Company CEOのKi Wan Kim氏
LG Electronics社Middle East&Africa Regional Company CEOのKi Wan Kim氏
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 新興国市場への展開を積極的に進めている韓国LG Electronics,Inc.。中東・アフリカ市場でも薄型テレビなどのデジタル家電,白物家電で上位のシェアを占める。同社で中東・アフリカ市場を統括する,Middle East&Africa Regional Company CEOのKi Wan Kim氏に話を聞いた。

——LG Electronics社の中東・アフリカ市場でのビジネスの歴史を教えてほしい。

Kim氏 ビジネスを開始したのは中東市場からで,今から20年ほど前のことだ。そのころ,韓国の建設関連企業は中東における建設事業に関わっており,多くの韓国人労働者やエンジニアが中東で働いてた。当時の韓国は貧しく,多くの若者が中東で家電を買って韓国に送っていた。韓国で家電を買うと関税が高く,ぜいたく品だったからだ。そこでLG社は,ここにショー・ルームを開設したり,カタログを彼らに配って注文を受け,韓国の家族の元に家電製品を送るビジネスを始めた。それがスタートだ。このビジネスは7年ほどで終わったが,建設需要が大きかったサウジアラビアとクエートに最初のオフィスを開設した。

——Kimさんの統括エリアは,中東・アフリカだが,現在は何カ国をカバーし,オフィスを何カ所開設しているのか。

Kim氏 今,カバーしているのは中東・アフリカ地区の78カ国。それを19カ国に設立したオフィスで見ている。その中には,イラクも含まれる。当社がオフィスを構えるイラク北部は政情も安定しており,治安上,問題はない。

——売上げ規模はどの程度か。

Kim氏 2007年は31億米ドル。2008年は40億米ドルを見込んでいる。

——統括する市場は広いが,その大半はイスラム教,アラビア語圏である。世界のその他の地域とは異なる戦略が必要になるのか。

Kim氏 私見では,アラビア系の人は西欧人よりも韓国人によく似ている。伝統を重んじ,情熱的で家族を大事にする。その点で韓国向けの戦略が通用する。もっとも,250カ国の人が住むといわれるUAE(アラブ首長国連邦)市場向けには,細かいセグメント別の戦略が必要になる。例えば,携帯電話機ではフィリピン人向け,インド人向けなどでデザインなどを変えている。

——2008年にはイスラム教のコーランを内蔵するHDDに記憶し,画面に表示できる液晶テレビを発売した。こうした地域ごとの独自仕様の製品を開発する際には,消費者に対してリサーチなどをかけるのか。

Kim氏 当社は消費者ニーズなどに対する調査に多くの投資をしている。コーラン対応テレビは,裕福で,イスラム教への信仰心が厚いアラブ人に大きなニーズがあることが調査で分かったために開発した。

——通常,製品企画は各地域の担当者が行うのか。

Kim氏 そうだ。地域ごとに製品企画を立てる。そして韓国本社のR&Dセンターにいるエンジニアなどと議論をして仕様などを決めていく。

——中東・アフリカ市場の成長のポテンシャルをどう見ているか。

Kim氏 この市場は一様ではない。GCC(湾岸協力会議)諸国は世界で最も豊か,対照的に中央アフリカはまだ何もないに等しい。しかし,共通しているのは,大半の国が天然資源を持っていること。特にアフリカ市場は成長のポテンシャルが非常に大きい。今は電気さえも通っていないかも知れないが,いったん生活インフラができれば,まずは携帯電話機,次に家電の需要が膨らむ。今は何もなくても,可能性があるのならそこに行かない理由はない。当社では,2000万米ドル以上を売り上げることができるかどうかを,新規参入の基準としている。

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