日本電産は2008年12月19日,2008年度の業績予想を下方修正すると発表した。客先への納入数が2008年11月以降急激に落ち込んだため。売上高は当初予想の8000億円から21.3%引き下げて6300億円,営業利益は38.9%減の550億円,税引前当期純利益が52.2%減の430億円,当期純利益が51.7%減の280億円。同社にとっては「1994年3月期に下方修正を一度だけしたことがあり,それ以来絶えてなかったことで大変残念」(同社代表取締役社長の永守重信氏)という。

 以下,発表会での永守社長の主な発言を紹介する。

「2008年10月までは計画通りだったが,11月の中旬になって客先からの引き取り数量(納入数)が突然落ち,11月末の落ち込みがひどかった。12月初旬は多少戻ったものの,12月10日ぐらいからまた大幅に落ちた。どこまで落ちるのか,これまでは予想できなかったが,ある程度見えてきたことから業績の修正を発表することにした。12月の受注と円高の状況が1~3月も続くとして年間の業績予想を作り直した。受注量については,客先から聞いた需要予想の数字を合計した数をうのみにはできないと考えており,悲観的な数字を基準としている」。

「需要の落ち込みは,家電製品,自動車向け,コンピュータ向けなど,どの製品向けでも起こっているが,特にデスクトップ・コンピュータ用のハードディスクドライブ向けのモータの落ち込みが激しい。ただノートパソコン向けは落ちておらず,ネットブック機向けには今後の需要が見込めるため,世界の生産拠点で生産ラインをデスクトップ機向けから転換している。ネットブックは世間の予想以上に伸びるはず,とグループには言っている」。

「11月と12月の落ち込みは,半分は製品の売れ行き不振,もう半分は製品の在庫調整と見ている。客先によっては,ふつうは2週間持っている在庫を3日とか5日にまで圧縮している。企業によっては,少し在庫調整のやりすぎのところがあるようにも思う。需要が戻ってきたときに,すぐに立ち上げられなくなっているのではないか」。

「今期はもうどうしようもないので,来期以降をどうするかが焦点だと考えている。需要が戻ったとき,次の立ち上がりの時期が勝負。工場を閉めて人を辞めさせるということをやりすぎてはいけない。これまでも企業体質を強化する手を打ってきてはいるが,仕事が減る中でも人を切ることはせず,改善活動に振り向け,売上高が50%になっても利益が出る体質の構築を急ぐ。40%になっても赤字にならないというところまでするかもしれない。1929年の世界大恐慌のときの状況について研究に研究を重ねて,グループ内に指示を出している。需要が元通りにはならなくても7割か8割にまで戻れば,体質改善によって自然と大きな利益が出ることになる」。

「これまでも不況のときはそのように改善を続け,強い企業にしてきた。今の不況は経験したことがないほどの落ち込みだが,やることは結局同じだ。他の企業と違った手を打つわけでもないが,対応策の実行スピードは速いと思っている。こういう時期になると,50人かかっていたラインを15人で動かすとか,20mあったラインを7mに短縮するといったアイデアが出てくる。同じことなら前からやっていればよかったのに,といわれるが,追い詰められないとアイデアもなかなか出ない。ただ,一方で研究開発は一切抑えてはいけない,断固として続けるようにと言っている」。

「2010年に1兆円企業を目指す,という目標を以前発表したが,それは1年か2年遅れると思う。情勢が大きく変わったので,再度挑戦するということになると思う。目標にこだわって無理な経営をするような時期ではない」。

「とにかく正社員の雇用は,ワークシェアリングをしてでも守ろうと思っている。ただパート従業員もそう簡単に削減するわけではない。あるグループの工場でパート従業員を2割削減しなければならないと言ったら,パートのおばさんが『自分たちの給料を2割減らしてもよい,その代わり全員の雇用を続けてほしい』と言ってきた。こんなことを言ってくれる人がわれわれの工場にはいる。そういう人たちを切れるものではない。甘いといわれるかもしれないが,雇用し続けることで士気は上がる。むしろ,そこで切ってしまう会社が強くなるとは思えない」。