高級ショッピング・モールのPacific Place。ジャカルタでは,現時点で一番新しいショッピング・モール。1階は高級ブランド店で埋め尽くされている。
高級ショッピング・モールのPacific Place。ジャカルタでは,現時点で一番新しいショッピング・モール。1階は高級ブランド店で埋め尽くされている。
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Pacific Placeに入っている,BEST DENKI。
Pacific Placeに入っている,BEST DENKI。
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各社の薄型テレビを100台ほど並べる。
各社の薄型テレビを100台ほど並べる。
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Samsung Electronics社は,「黒い白物家電」で精悍なイメージを強調。インドネシアではこうした黒い冷蔵庫が流行っているそうだ。
Samsung Electronics社は,「黒い白物家電」で精悍なイメージを強調。インドネシアではこうした黒い冷蔵庫が流行っているそうだ。
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パナソニックは,家庭で家電製品を設置した場合のイメージを展示。インドネシアでは環境配慮に対する意識が低いため,啓蒙活動に務めているという。
パナソニックは,家庭で家電製品を設置した場合のイメージを展示。インドネシアでは環境配慮に対する意識が低いため,啓蒙活動に務めているという。
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Carrefourの入り口付近。
Carrefourの入り口付近。
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 インドネシアの首都ジャカルタで,「高級」を掲げた家電量販店の出店が相次いでいる。日本のベスト電器とインドネシア現地会社との合弁会社,PT BEST DENKI INDONESIAの店舗だ。インドネシアでの1号店であるSenayan City店から来年開店予定の2店舗まで,合計6店舗すべて有名ブランド店が立ち並ぶ高級ショッピング・モールに入居する。

 BEST DENKI INDONESIA社の店舗のうち,最も新しいPacific Place店(2008年10月末開店)に行ってみた。Pacific Place自体は,日本のデパートよりも巨大で,かつ豪華な印象の内装に彩られたショッピング・モールである。同社のMANAGING DIRECTOR 花崎健司氏によると,高所得者層に向け,高級イメージの家電量販店を目指しているという。店内は明るく,通路は広い。製品もゆとりを持って展示してあるので,筆者は日本の量販店よりも「きれいな店舗」という印象を受けた。基本的には製品別にまとめて展示してあり,テレビでは商品の特徴を説明するためのデモも行われていた。店内の表示によると,例えば,Samsung Electronics社の37型フルHDの液晶テレビが994万4150ルピア(1ルピア=0.008円換算で約8万円)だった。

 配送や修理受付などのサービスについても,日本の家電量販店と同様のサービスを提供する。極めつけは店内BGMとしてのベスト電器のテーマ音楽だ。「サービスの『From JAPAN』,上質さを強調するため,歌詞の意味そのものが伝わらなくても日本語のまま流している」(花崎氏)。こうした日本企業ならではのサービスによって高級感を出すことで,ほかの小売店との差異化を図る。

 日本の量販店との違いは,店内奥にある,メーカー別の展示コーナー。さまざまな種類の製品を展示する。実は,インドネシアでは流通する製品が少なく,店舗の展示スペースにあまりが生じてしまったため,メーカー別コーナーを設けたという。筆者は,各社が目指す製品イメージを顧客に伝えるために役立ちそうだと感じた。

「社員教育が大変」

 BEST DENKI INDONESIA社の花崎氏は「社員教育が大変」と語る。同社の場合,「採用して1カ月は,あいさつや態度といった基本から仕込む」(花崎氏)とのことで,日本の量販店とほぼ同じ雰囲気である。

 一般的なインドネシアの家電量販店とはどういった雰囲気のものなのかを探るため,二つの家電量販店へと向かった。一つは,安価な製品を扱うハイパー・マーケット「Carrefour(カルフール)」である。庶民派ショッピング・モールの2階ある,Carrefour Lebak Bulus店に行ってみた。

 カルフールの入り口近くには,主要メーカーの液晶テレビや携帯電話機が置かれている。店内配布のビラによると,例えば,LG Electronics社の37型フルHDの液晶テレビは1129万9000ルピア(同約9万円)だった。主要メーカーの製品の中,山積みにされたプライベート・ブランド「BLUE SKY」の製品が目立つ点が,Carrefourらしい。小物家電ともなると,ざっと半分は筆者の知らない中国メーカーや地元メーカー品が占めるようだ。

 店員の様子は衝撃的だった。店舗を訪れたのが平日で客が少なかったこともあるのだろうが,店員数が多く,皆暇そうである。4~5人ずつ集っては冗談でも言い合っている様子ではしゃいでいる。客が製品を眺めていても接客しない。ある人によれば,インドネシアではこうした接客態度が一般的という。2億4000万人と,世界第4位の人口を抱える人口大国だからといって,ちょっと無駄なような気もする。

 ただし,もしかすると店舗による差かもしれない。別のCarrefourでは,その売り場の担当者2人が壁を背に並んで立ち,暇なときにコソっと話している程度。私が製品を見ていればそっと近寄って待ち構えていた。電器店店員としてはごく普通と感じた。

 ちなみに,同店に関連してインドネシアらしさを感じることが二つあった。一つは電気が止まったこと。このショッピング・モールに滞在した30分間に2回,それぞれ3~4分間にわたって電気が止まった。インドネシアに多いと聞いていた瞬間停電だったのか,単にブレーカーが上がったのか,よく分からない。もう一つは,同店で購入した袋入りの豆菓子(同約21円)に小石が混入していたこと。豆菓子と同様に衣を付けて揚げられ,見た目は豆菓子そのものだった。口に放り込んでかんだ瞬間のゴギュ!という感触で慌てて吐き出した。この小石,大きさが豆とまったく同じで「まぁこういうこともあるよね」と思ってしまった。もし日本で同じ状況になった場合,こんなふうにのん気には考えられないように思う。

 もう一つは,地元電器店の大手「electronic city」のSUDIRMAN(SCBD)店。高級ショッピング・モール「Pacific Place」のすぐ裏手にある。外資系企業などが立ち並ぶ,オフィス中心街のすぐ隣でもある。周囲は2階建ての倉庫のような店舗で,店内はやや暗め。1階は電器店,2階はフード・コートになっている。

 いわゆる主要なメーカーの場合,基本的にはメーカー別に各種機器を展示しているようだ。店内配布のビラによると,韓国Samsung Electronics社の37型フルHDの液晶テレビは1239万9000ルピア(同約9万9000円)。シンガポール Palladine Technology社などの地元メーカーもコーナーがあったが,製品が少なくPOPもないので少々寂しい。同社の42型フルHDの液晶テレビは1159万9000ルピア(約9万3000円)だった。テレビなど一部の機器は,各社の製品をまとめた展示もあった。通路を歩いていると,お勧め製品を売り込むべく積極的に声を掛けてきたりと,店員の態度は家電量販店としてごく普通だった。