日本電子は2009年1月1日に発売する臨床検査用自動分析装置「BioMajesty JCA-BM6070」の販売活動やマーケティング活動において,3次元設計データを基に制作した3次元コンピュータアニメーションを利用している。試作品ができる前から新製品の紹介活動ができ,試作品ができた後も新製品の最も重要な訴求点を的確に表現できる,といった利点が分かってきた。アニメーションは1人が30時間かける程度の工数で作成できた。

見せたいところを的確に訴求

 この新製品は1時間に1800項目(オプションを加えれば2400項目)の検査ができるという,高速性が売り物。血液などの検体に薬液を注入し,光を透過させて観測することで,「LDLコレステロール」「γGTP」「血糖」「ヘモグロビンA1c」といった生化学検査(1800項目/時)と,ナトリウム,カリウム,塩素といった電解質検査(オプション,600項目/時)を独立して実行できる。薬液注入や分注用のノズル,検体のターンテーブルなどが2秒サイクルで動作する。マーケティング担当者としては「この動きの様子をよく見せたい」(医用機器ソリューション営業本部部長の川中士郎氏)と考えた。

日本電子が2009年1月に発売する自動分析装置「BioMajesty JCA-BM6070」の実物写真
日本電子が2009年1月に発売する自動分析装置「BioMajesty JCA-BM6070」の実物写真 (画像のクリックで拡大)

 アニメーションでは「この動きを実際のスピードで表現できた」(同)ことから,顧客への説明に非常に有効だという。この「見せたいところをはっきり見せられる」のがコンピュータ・アニメーションの特徴。時間の経過や動きを明確に見せられる上に,物理的に見せたくないものは省くことができる。実機の撮影ではどうしても,見せたい部位の手前に存在するものや,画面に入ってきてしまう配線や配管など,本質的でないものを除去することができない。意外と,的確な訴求のできる動画像を制作するのは難しいという。また,実機では「見せたいところだけを動かすのも難しい」(川中氏)。

検体の入り口。ここから機械内に検体が1本ずつ入り,希釈や薬液注入,測定などの処理が始まる(CGアニメーションから)
検体の入り口。ここから機械内に検体が1本ずつ入り,希釈や薬液注入,測定などの処理が始まる(CGアニメーションから) (画像のクリックで拡大)

 実機の代わりに用いることで,例えば地方などでの初期の説明で活用すれば,実機の輸送費を節約できるという効果がある。装置が大きく高価(本体価格5850万円)なため,一度運ぶと50万円程度はかかるという。実際,地方からは実機を持ってきてほしいという要望がしばしばあるが,実際にはなかなか持っていけなかった。

 その一方で,コンピュータ・アニメーションは使い方によっては,実機や実写画像と相互に役割を分担できる可能性もある。「まずざっと実機を見てもらってから,特徴を重点的に描いたコンピュータ・アニメーションを見てもらうとかすると,顧客によりよく理解してもらえると思う」(同)。

CADデータを転用可能に