「Carrefour(カルフール)をぜひ,見てきてください」。フランス系のハイパー・マーケットであるCarrefourは,中東のエレクトロニクス事情を調査するには必須の場所だと,複数の取材先の方が教えてくれた。
ドバイのCarrefourの一つは,ショッピング・モール「Mall of the Emirates」の中にある。筆者個人としてはブランド品には全然興味がないが,連日ショッピング・モール通いが続く。確かに,他の国と比較すると価格が安いらしく,世界各国から来たご婦人達は目を輝かせて店から店をはしごしている。妻を連れてこなくてよかったと安堵する。
Mall of the Emiratesと言えば,砂漠の国に屋内型人工スキー場を作ったことで有名だ。気温が最高でも25度程度の今の時期ならいいが,50度近くにもなる真夏では,この雪を維持するのにどれだけのエネルギーを費やしているのか。産油国の人はそんなことは考えないのか・・・。
よくやるなあ,と感心しながらショッピング・モールを歩いていくとCarrefourに到着した。とにかく巨大である。私の家の近所のスーパーマーケットの何倍あるのか,想像もつかない。レジの数を数えてみるとなんと50以上もある。しかも,平日の夜というのに混雑していて,ほとんどのレジが稼動している。買い物をしているのは地元や近隣諸国からやってきたアラブ系の人たち,インドやパキスタン,フィリピン,中国などから出稼ぎに来ている人たち,そして英国,ロシアなど西欧から避寒旅行に来ている人たちなどだ。金融危機に端を発した世界同時不況の影響は,ここでは微塵も感じられない。
ハイパーマーケットは,百貨店とスーパーマーケットを統合した販売店である。その通り,食料品から家電製品,医薬品,生活用品,宝石,工具,おもちゃ,など何でもそろう。まさにOne Stop Shoppingを具現化しているのだ。
Carrefourの非食料品コーナーの入り口付近に,ソニーや韓国Samsung Electronics社,シャープなどの液晶テレビが,メーカーごとに陳列してあるのを発見する。入り口付近なので,テレビの前で立ち止まる客も多い。目の前を,液晶テレビをカートに載せて運んでいくお客が通り過ぎていく。
調査会社のGfK-MEMRBによると,現在,UAEで最もよく売れている液晶テレビの画面サイズは32型。Carrefourでの価格は2000~2500ディルハム(6万~7万5000円)程度である。昨日訪問した大型家電量販店と比較して,決して価格が大幅に安いわけではない。しかし,価格に大差がないのであれば,他の商品も含めて1カ所で購入できるCarrefourで家電も買ってしまおう。そんな人が増えているという。
「価格はどこで買ってもそんなに大差がない。だから,買う商品をインターネットで事前に調べて,Carrefourに来たついでに購入する客が増えている」(GfK-MEMRB)。Carrefourが家電量販店とともに,メーカーにとって重要な存在になっているのには,こんな理由がある。同社は現在,中東地域に26店舗を構えている。
ただし,メーカーにとってCarrefourのようなハイパーマーケットは付き合いやすいパートナーではないようだ。ある日本の大手家電メーカーの幹部は,「量販店として力が強いので,一緒に販売戦略を考えるって感じじゃないですからねえ」と本音を漏らす。旺盛な消費熱を吸収するハイパーマーケットの拡大は,メーカー各社にとってうれしくもあり,悩ましくもあるようだ。