図◎会見に臨んだホンダ社長の福井威夫氏
図◎会見に臨んだホンダ社長の福井威夫氏
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 ホンダ社長の福井威夫氏は,2008年12月17日に開いた年末社長会見において,記者からの質問に回答(図)。米「ビッグスリー」が破綻した場合に日本の自動車メーカーが受ける影響について,破綻の仕方によっては市場がさらに冷え込む可能性があるなど,短期的にはマイナスになり得るが,「長期的には有利」と語った。また,日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏が発言したことで話題になっている日本政府による自動車産業への支援の必要性について,「政府にお願いする以前にやるべきことはある」と回答。ただし,為替の安定には「もう少し積極的に動いてほしい」と語った。

 この部分の質疑応答については以下の通り。

──ビッグスリーの中で1社でも破綻した場合,日本メーカーを含めて世界の自動車メーカーへの影響はどのようになると考えるか。また,米国政府がビッグスリーに対して支援する場合の評価は?

 破綻の仕方はいろいろあるだろうが,ホンダを含めて世界中の自動車メーカーにとって(ビッグスリーの破綻は)良いことではないと思う。何らかの支援策で健全な体質に戻るということが,ベストな方法だと思う。ただし,米国でいろいろ議論されていると思うが,適正な競争を欠くような不公正な支援であってはならないと考えている。

──なぜ,ビッグスリーの破綻が日本メーカーにとって「良いことではない」のか。ビッグスリーが破綻寸前に追い込まれたのは公平な競争の結果であって,日本メーカーにとってはむしろチャンスなのではないか。

 基本的にはその通りだ。だが,直近の状況を考えると,米国の自動車市場の重要さは非常に大きいものがあり,それに対する(消費環境に与える)インパクトを考えると,破綻の仕方によっては非常に好ましくない状況になると言っている。長期的には「優勝劣敗」だから,お客様に選ばれるメーカーが成長し,そうではないメーカーが衰退するのは当然のことだ。

──ビッグスリーが破綻すると,米国のサプライヤーが打撃を受けるという説がある。ホンダは米国における生産において,かなり現地資本のサプライヤーに依存している。こうしたサプライヤーが破綻した場合,ホンダの米国での生産に混乱が生じ得るのではないか。

 1カ月以上前にビッグスリーの(破綻の)話題が出始めたころから当然,そうしたリスクは考えてきた。確かに,ホンダは米国で生産するクルマに関して,いわゆる100%米国現地資本のサプライヤーからも部品を調達している。これらは数十社になるが,ビッグスリーのうち1社にでも万が一のことが起きた場合に,一緒に倒れる可能性があるサプライヤーはすべて洗い出している。
 仮にそうしたサプライヤーが破綻した場合でも,1カ月くらいもちこたえれば,いろいろと代替手段が取れる。例えば,日本やその他の国から部品を送ったり,金型を移動し(て米国の他のメーカーで部品を加工し)たりといった,さまざまな(代替手段の)ノウハウや経験をホンダは蓄積している。従って,1カ月もてばなんとかなるだろうと思っている。部品によっては1カ月分の在庫を持つことも一つの方法だし,さまざまなことを現在検討している。

──日本政府に対して,各国が行っているような低利融資などを含めた要請をするつもりはあるか。

 現在の厳しい状況は自動車業界全体の共通課題で,それに関する対応は各社でそれぞれあると思う。だが,少なくともホンダは政府にお願いする以前に自社でやるべきことはあると考えている。

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