Samsungグループが開発した,IGZOを用いた高速TFTの構造
Samsungグループが開発した,IGZOを用いた高速TFTの構造
[画像のクリックで拡大表示]

 韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.や同社の研究所Samsung Advanced Institute of Technology(SAIT),日立製作所中央研究所は,現在開催中のIEDM 2008で,インジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn)から成るアモルファス酸化物半導体(IGZO)を用いて試作した各種のTFTやメモリ構造についてそれぞれ発表した。特にSamsungグループは,3件も発表し,IGZOに対する取り組みの熱心さを示した。

 IGZOは,TFTなどの半導体層向け材料として,アモルファスSiに比べてキャリア移動度が高く,低温多結晶Siに比べてバラつきが小さいことから次世代パネル用TFTとして注目されている。加えて,比較的低温でTFTを形成できることから,フレキシブル基板を用いたエレクトロニクス技術としても脚光が当たっている。

 Samsungグループが発表したのは,IGZOを用いた高性能TFT,5段の高速リング・オシレータ(RO),メモリ読み出し回路を組み込んだ3次元(3D)構造のRRAM(Resistance RAM)など。高性能トランジスタは半導体層としてInZnOまたはITOの層と,IGZOの層の2層構造を採り,キャリア移動度が104cm2/Vsと高い。ROは,1段の遅延が0.94nsと「従来の報告に比べて75倍も高速」(SAIT)という。3DのRRAMは「読み出し回路を周辺に配置した3D RRAMより占有面積を小さくできる可能性がある」(SAITなど)という。

 一方,日立製作所はウエアラブル・コンピュータなどの実現を目指して,IGZOを用いた各種TFTの試作結果について発表した。従来のTFTに比べてスレッショルド・スロープの値が1/3以下と低いため,1.5Vの低電圧でも駆動可能になるという。PET基板の上にTFTを形成した例も発表した。同社がIGZOを用いたトランジスタについて発表するのは「今回が初めて」(同社)という。

この記事を英語で読む