BRICs諸国を合計したGDP(国内総生産)は,2004年に先進主要6カ国(G6=日本,米国,英国,ドイツ,フランス,イタリア)合計の約14%の規模にまで成長している。既に一部の民生機器の市場規模は,この数字から想像されるよりも,はるかに成長している(図3)。例えば,携帯電話機では 2004年の世界販売台数のうち,約2割がBRICs諸国向けだった。この市場では,Samsung社やNokia社,Motorola社などが熾烈なシェア争いを繰り広げている。
しかし,エレクトロニクス・メーカーによる本当の戦いはこれから始まる。BRICs市場は今後も高成長を長期間維持するが,先進国並みに成熟するまでには,まだ時間的に猶予があるからだ。「リストラを経て筋肉質になった今こそ,世界で勝負する時。ここで攻めに出るエレクトロニクス・メーカーでなければ,将来勝ち残れないのではないか」(リーマン・ブラザーズ証券会社 株式調査部 ヴァイス プレジデントの杉由紀氏)。
BRICs市場は2000年から5年間のGDP成長率の平均値がおよそ5.5%と,G6の2%弱を大きく上回った。政情不安など特殊なマイナス要因が発生しない限り,成長率は当面衰えることがない,というのが専門家の大方の見解である。米Goldman Sachs社の予測によれば,BRICsにおいて年収3000米ドル以上の中間所得層は,2005年には2億1000万人だが,2010年は5億2000 万人,2020年には14億1000万人に増える(図4)。長期的に見ると,中国は2016年に日本を追い抜き,米国に次ぐ世界第2位の経済大国になると予想されている(図5)。インドも2032年には日本を抜く。そのころロシアは,欧州で最大の経済大国になる。そして2039年には,BRICs諸国全体の市場規模はG6を追い越す可能性があるという。