「ワンセグ抜きでは売れない」

中野 悦弘氏
NTTドコモ プロダクト部 第一商品企画担当部長

 NTTドコモとして機能を満載する「全部入り」を大きく打ち出した前作の「FOMA 905i」シリーズは,発売日に購入者の行列ができるほど人気が出た。販売制度が割賦販売へと移行する時期にちょうど重なったという要因もあったが,発売日の行列は当社としても久々の出来事だった。全部入りケータイは,ユーザーに好評だった。

 今回の「906i」シリーズでは,905iのコンセプトを引き継ぎ,「全部入り」を果たした上で,デザイン面などで「端末ごとの個性」を打ち出している。例えば,女性ユーザーを意識してLEDによるイルミネーション機能を取り入れたり,若者向けに独特な色の筐体を採用したりした。

 もちろん,主要な機能はおおよそ網羅してある。例えば,ワンセグ受信機能は,高速大容量通信に向けた無線LAN搭載モデルを除いた残りの7機種すべてに搭載した。そうしたのは,905iシリーズでの経験に基づいている。

 905iシリーズはシリーズ全体としてよく売れたが,予想よりも販売結果は芳しくなかった機種もあった。この機種は非常に薄いなど素晴らしい別の魅力を備えていたが,ワンセグ受信機能を備えていなかった。そのことが,ユーザーの購入動機につながりにくくなった一因と考えている。

 同じ価格帯の商品ならば,ユーザーはより多くの機能が付いているものを選ぶ,ということだ。端末自体によほど強いコンセプトがなければ,一度搭載した機能を取り除くのは難しいのが現実だ。