2008年の日本市場向け携帯電話機の代表例として,「FOMA 906i」シリーズの全8機種を分解した。ワンセグ,FeliCa,GSM,HSDPA,GPSなどの多数の機能を搭載した上で,アンテナの内蔵や筐体の薄型化を実現する各社の取り組みが見えてきた。多機能と薄型を両立するため,雑音対策が以前に増して難しくなっている様子が見て取れた。主に「多機能化」「薄型化」「雑音対策」という観点から各社の製品の分析結果を報告する。(本記事は,『日経エレクトロニクス』,2008年9月22日号,pp.93-100から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
ワンセグ受信機能,FeliCaによる電子決済サービス,GSMによる国際ローミング,HSDPA対応の高速データ通信,GPSによる位置情報サービス,果てはBluetooth機能や無線LANによる通信機能まで——日本の携帯電話機の高級機種は,多機能な「全部入り」が当たり前になっている。
こうした取り組みは海外のそれと大きく異なるため,
例えば,電子決済サービスで利用できる無線通信規格「NFC(near field communication)」への対応やモバイル・テレビ放送対応は今後,世界の携帯電話機の標準的な機能になりそうだ。実際,欧州では携帯機器向け放送規格「DVB-H(digital video broadcasting-handheld)」の対応サービスが既に始まっている。携帯電話機の出荷台数で世界トップシェアを握るフィンランドNokia Corp.は,GPSを使った位置情報サービスなどへ重点を置く姿勢を見せている。
日本の端末は,進化の袋小路に迷い込んだ「ガラパゴス・ケータイ」ではない。「将来普及する新機能を先取りし,世界に先駆けて試す実験機」(ある部品メーカーの技術者)なのである。
今回,NTTドコモの「FOMA 906i」シリーズ全8機種を分解,日本の高級機種の現状を探った(表1)。なお,分解には部品メーカーや携帯電話機メーカーの技術者,携帯電話機の分解調査を手掛けるフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの協力を仰いだ。