アンテナは重要なノウハウ

 P906iは,ワンセグ向けアンテナの受信感度を向上させるために,二つのアンテナを使う合成ダイバーシチ技術も採り入れる。「FOMA P903iTV」から採用しているものだ。このため,上記の金属板によるアンテナに加えて,少なくとももう一つのアンテナが実装されているはずである。そこで複数の技術者にアンテナの配置を推測してもらったが,技術者によって分析結果が異なった。パナソニック モバイルコミュニケーションズ(PMC)は「内蔵アンテナの配置手法は重要なノウハウであり,明かせない」としており,差異化のポイントと言えそうだ。

 P906iではアンテナに対する工夫に加え,筐体の機構についても,折り畳み式のディスプレイを縦方向だけでなく横方向にも開く機構とすることで,ワンセグ機能の付加価値を向上させている。ただし,「ディスプレイの背面をアンテナに使っているとするなら,ディスプレイを開く方向によってアンテナの向きが変わってしまうことになる。このため,開き方によって受信感度が異なる」(電機メーカーの技術者)現象が生じる可能性がある。

FeliCaアンテナは多種多様

 一方,FeliCa向けアンテナでは,端末ごとに形状が大きく異なった。アンテナ素子となる金属を比較的大きなループ状とする必要があるため,筐体のデザインによってアンテナ形状が左右されやすいからという。

 さらに,FeliCaに使う周波数帯が13.56MHzであることも,各社各様の取り組みが見られる理由となりそうだ。携帯電話機ではこの近辺の周波数帯を使う機能は少なく,「電波の干渉対策が,ワンセグなどと比べれば容易。通常は,電波干渉の起こりそうな機能を優先して配置する」(前出の技術者)ため,FeliCa向けアンテナは設計順序として後回しにされやすいという事情がある。

 FeliCa向けアンテナは,アンテナを封入する材料と構造に着目すると,4種類に大別できる。金属ワイヤを,(1)フレキシブル基板に内蔵する方式(N906i,N906iL,N906iμ,F906i,SH906i),(2)ガラス・エポキシ基板に内蔵する方式(P906i),(3)そのまま筐体内に配置する方式(SH906iTV),(4)フレキシブル基板に内蔵し,スペーサを設置して立体構造とした方式(SO906i),である(図2)。

図2 工夫に富むFeliCa向けアンテナ FeliCa向けアンテナは,各端末で大きく異なる。アンテナとして比較的広い面積が必要であることなどから,形状が筐体のデザインなどに左右されやすいためだ。例えばN906iやF906iでは,高価だが薄 くできるフレキシブル基板を使う (a,b)。P906iでは,フレキシブル基板よりは厚くなるが,比較的安価なガラス・エポキシ樹脂にアンテナを封入した(c)。SH906iTVでは,金属ワイヤのみでアンテナを構成した(d)。SO906iでは,村田製作所製のアンテナを使った(e)。このアンテナは,細長い形状の両端に厚みを持ったアンテナ素子を設置することで,実装面積の削減を狙ったものである。
図2 工夫に富むFeliCa向けアンテナ FeliCa向けアンテナは,各端末で大きく異なる。アンテナとして比較的広い面積が必要であることなどから,形状が筐体のデザインなどに左右されやすいためだ。例えばN906iやF906iでは,高価だが薄 くできるフレキシブル基板を使う (a,b)。P906iでは,フレキシブル基板よりは厚くなるが,比較的安価なガラス・エポキシ樹脂にアンテナを封入した(c)。SH906iTVでは,金属ワイヤのみでアンテナを構成した(d)。SO906iでは,村田製作所製のアンテナを使った(e)。このアンテナは,細長い形状の両端に厚みを持ったアンテナ素子を設置することで,実装面積の削減を狙ったものである。 (画像のクリックで拡大)