米Apple社の「iPhone 3G」の内部構成を解説する記事の第二弾。iPhone 3Gの分解結果を報告した第一弾に続き,今回は前機種「iPhone」と比べた改良点を報告する。組み立て作業性の向上や,実装面積の削減,コストダウンを図った部分が随所にあった。(本記事は,『日経エレクトロニクス』,2008年8月11日号,pp.54-57から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 米Apple Inc.が,2008年7月11日に世界22カ国で発売した第3世代携帯電話(3G)対応の「iPhone 3G」。本誌は日本版のiPhone 3Gを,国内メーカーの技術者の協力を仰ぎながら分解し,2007年6月29日に米国で発売された2G版iPhoneと内部構成の違いを比較,分析を試みた。

 iPhone 3Gの外観は,2G版iPhoneとほとんど変わらない。だが,部品配置を含めて内部は一新されていた。組み立て作業性を向上させたほか,実装面積の削減や部品のコストダウンを図っている姿勢も垣間見えた。ただし,メイン基板に実装されている部品のほとんどは2G版の供給メーカーを継承しており,電気回路の面では過去を踏襲した設計と言ってよい。

組み立て性考慮した部品配置

 端末の外形寸法は,iPhone 3Gが115.5mm×62.1mm×12.3mm,2G 版iPhoneが115mm×61mm×11.6mmと,ほぼ同サイズである。機能面の違いも携帯電話機能のW-CDMA/HSDPA対応と,GPS受信機能などに限られている。ところが実際に両機種を分解して比較すると,筐体内部の部品配置は大きく異なっていた(図1)。2G版iPhoneは,筐体中央部に置いた金属製のフレームを挟むように主要部品を取り付ける構成を採っていた。メイン基板と外部接続用コネクタが離れて配置されており,これらを接続するためのフレキシブル基板(FPC)が筐体内にはい回っている。これに対して,iPhone 3Gは筐体裏カバーの上に部品を重ねていく,すっきりとした構成に変更された。メイン基板は1枚構成で,他のモジュールを接続するFPCも短い。組み立て時の作業性向上は明らかだ。

図1 合理的な設計になったiPhone 3G iPhone 3Gと2G版iPhoneの外観はよく似ているが,内部の部品配置が異なる。2G版iPhoneは,筐体中央部にあるフレームの上下に主要部品を取り付ける構成を採っていた。 だが,iPhone 3Gでは筐体裏カバーの上に部品を重ねていく構造になる。加えて,筐体裏カバーを樹脂製にすることでアンテナ配置に自由度が増した。この結果,W-CDMAと GSM用のメイン・アンテナと無線LANとBluetooth,GPS用サブ・アンテナを別々の場所に配置できた。金属製の裏カバーを採用した2G版iPhoneでは筐体下部にアンテナ を集中させていた。搭載するLiポリマ2次電池は,iPhone 3Gと2G版iPhone共に,電池セルを直接ラミネート・フィルムで包んだだけの構成を採る。電池容量は記載されて いないが,容積はほぼ同程度である。
図1 合理的な設計になったiPhone 3G iPhone 3Gと2G版iPhoneの外観はよく似ているが,内部の部品配置が異なる。2G版iPhoneは,筐体中央部にあるフレームの上下に主要部品を取り付ける構成を採っていた。 だが,iPhone 3Gでは筐体裏カバーの上に部品を重ねていく構造になる。加えて,筐体裏カバーを樹脂製にすることでアンテナ配置に自由度が増した。この結果,W-CDMAと GSM用のメイン・アンテナと無線LANとBluetooth,GPS用サブ・アンテナを別々の場所に配置できた。金属製の裏カバーを採用した2G版iPhoneでは筐体下部にアンテナ を集中させていた。搭載するLiポリマ2次電池は,iPhone 3Gと2G版iPhone共に,電池セルを直接ラミネート・フィルムで包んだだけの構成を採る。電池容量は記載されて いないが,容積はほぼ同程度である。 (画像のクリックで拡大)

この記事を英語で読む