2008年に大きな話題を振りまいた製品の一つが,米Apple社の「iPhone 3G」だったことは間違いない。日本市場への影響は今ひとつだったものの,米国を中心に世界各国でスマートフォンの市場を盛り上げた。以下は,発売とともに端末を入手し,いち早く内部構造を分析した記事である。Apple社の2次電池の扱い方が,分解に参加した技術者を驚かせた。(本記事は,『日経エレクトロニクス』,2008年7月28日号,pp.11-12から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
2008年7月11日,米Apple Inc.は第3世代携帯電話(3G)に対応した「iPhone 3G」を,日本を含めた世界22カ国で販売開始した。本誌はソフトバンクモバイルが発売した日本版のiPhone 3Gを入手し,国内の技術者の協力を仰ぎながら分解を試みた。
2 次電池の取り換えは困難
分解に協力した技術者の多くが驚いたのは,Liポリマ2次電池の取り扱いである。形状と筐体内での配置が,国内メーカーが手掛ける端末と比べてかなり異なっていた(図1)。iPhone 3Gが搭載するLiポリマ2次電池は,電池セルを直接ラミネート・フィルムで包んだだけの構成を採っている。国内メーカーは通常,電池セルを金属や樹脂製の筐体に収める。「信頼性に神経質な国内の通信事業者が受け入れたのは信じ難い」(国内の携帯電話機メーカーの技術者)という。
Liポリマ2次電池は,樹脂製の筐体の裏ぶたに強力に接着されている。そこにたどり着くには,20本ものネジを緩めて,メイン基板を取り外す必要がある。「簡単に電池交換できる設計ではない」(国内の部品メーカーの技術者)。実際,Apple社はiPhone 3Gの電池交換サービスを,筐体ごと交換するという形で提供している。
Liポリマ2次電池の熱対策には,配慮が見られる。Liポリマ2次電池が接するメイン基板と筐体裏ぶたに,グラファイト・シートを張っている。Liポリマ2次電池の温度が局所的に上昇するのを防ぐとともに,メイン基板側に放熱する目的とみられる。