東芝は,火力発電所などから排出されるCO2を分離・回収し,地中に貯留するCCS(carbon dioxide capture and storage)技術のパイロット・プラントを,シグマパワー有明の三川発電所内に設置すると発表した(発表資料)。シグマパワー有明三川発電所は,福岡県大牟田市にある出力4万7500kWの火力発電所。パイロット・プラントは2009年春に着工し,2009年8月ごろから実証実験を開始する予定。東芝は,同プラントの設置によってCCS技術の実用化に向けた研究開発を加速する。

 今回建設するパイロット・プラントが担うのは,CO2の分離・回収と貯留という2つの過程のうちの分離・回収の過程。三川発電所のボイラーの排ガスからCO2を分離・回収する。1日のCO2回収量は10トン。東芝によれば,CCS技術の実用化に向けては,発電所の経済性を損ねずに,いかにCO2を分離・回収するシステムを構築するかが課題という。同プラントには,分離・回収の過程でエネルギー消費が少ない,東芝が開発したアミン系吸収液を使用する。

パイロット・プラントの構成図
パイロット・プラントの構成図 (画像のクリックで拡大)

 実証実験では,システムの性能を実証する。さらに,火力発電所の排ガス中のSOXなどの含有物質がシステムに及ぼす影響のほか,タービンなど他の発電システムとの統合や運用ノウハウなども検証する。

 東芝は,商用のCCSシステムのニーズが,2015年ごろに火力発電所市場で高まると見ている。同社は2008年10月1日に,CCS技術の開発と事業推進の強化に向けて専門組織を設置している。