講演するST MicroelectronicsのLaurent Ducousso氏 日経BPが撮影。
講演するST MicroelectronicsのLaurent Ducousso氏 日経BPが撮影。
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FreecaleのESLモデル 上から四つがFreescale社内向けで,上から三つ目まではプロセサ・コアのみのモデル。下の二つが部品メーカーや自動車メーカーなどに提供するモデルで,一番下はMATLABと連携する。Freecaleのデータ。
FreecaleのESLモデル 上から四つがFreescale社内向けで,上から三つ目まではプロセサ・コアのみのモデル。下の二つが部品メーカーや自動車メーカーなどに提供するモデルで,一番下はMATLABと連携する。Freecaleのデータ。
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東芝のテレビ用SoCの検証環境 EVEのZeBu-XLに載せた部分(右)とC言語モデル(左)で協調動作する。両者間はトランザクタで接続。東芝のデータ。
東芝のテレビ用SoCの検証環境 EVEのZeBu-XLに載せた部分(右)とC言語モデル(左)で協調動作する。両者間はトランザクタで接続。東芝のデータ。
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STのデジタル家電用SoCとEVEのZeBu-XXL適用部分 STのデータ。
STのデジタル家電用SoCとEVEのZeBu-XXL適用部分 STのデータ。
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Processor Designerの導入プログラム「BootCamp」の概要 ヤマハのデータ。
Processor Designerの導入プログラム「BootCamp」の概要 ヤマハのデータ。
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ソフトウェアのバーチャル・プラットフォーム導入の効果 左端がプロセサ・コアと一部の周辺回路のソフトウェア・モデル(バーチャル・プラットフォーム)で最も高速。中央の二つはC言語モデルを加えたもの。右端は,左端のモデル部分をプリント基板に実装したもの。リコーのデータ。
ソフトウェアのバーチャル・プラットフォーム導入の効果 左端がプロセサ・コアと一部の周辺回路のソフトウェア・モデル(バーチャル・プラットフォーム)で最も高速。中央の二つはC言語モデルを加えたもの。右端は,左端のモデル部分をプリント基板に実装したもの。リコーのデータ。
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次世代デバイス・シミュレータのKOSMOS 神戸大学のデータ。
次世代デバイス・シミュレータのKOSMOS 神戸大学のデータ。
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 大規模で複雑になる一方のSoC(system on a chip)の設計を救う,と言われて久しいESL(electronics system level)手法やツール。これまではEDAベンダーの喧伝が目立っていたが,いよいよ設計現場への本格的な普及を感じさせる講演会が2008年11月28日に東京であった。日米欧の半導体メーカーが適用事例を発表した。

 この講演会は,コーウェア(米CoWare, Inc.の日本法人)と日本イブ(仏EVE SAの日本法人)が共催した「ESL User's Meeting 2008:CoWare J-CING & EVE 0-Bug Conference)」である。そこで,米Freescale Semiconductor Inc.(登壇者はフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン),東芝,ヤマハ,伊仏ST Microelectronics NV,リコーの各半導体メーカーや半導体部門と,半導体関連の研究に従事する神戸大学の工学研究科がESL手法やツールのユーザー講演を行った。

 ESLは,現在,LSIのハードウェア設計で主流のRTL(register transfer level)より高い抽象度を指す言葉であり,ESL設計を支援するツールは複数ある。最もよく知られているのが動作合成ツールで,今秋に行われた同ツール3社のユーザー講演はいずれも多数の聴衆を集めていた(Tech-On!関連記事1同2同3)。今回の講演会を催した2社は動作合成ツールを扱っていないため,同ツールのユーザー講演はなかったが,複数のESLツールのユーザーが登場し,ESLでもツールを活用した設計が本格的になってきたことを窺わせた。以下に各講演のポイントを紹介する。

MATLABと連動するモデルを提供

 最初のユーザー講演者は,フリースケールの吉澤宏氏(技術本部技術本部 オートモーティブ システム・ソリューション・エンジニアリング コンシューマシステム・ソリューション・エンジニアリング 部長)が務めた。同氏は自動車用のLSIではソフトウェアの開発量が問題となっていることを指摘し,ソフトウェア先行開発のために,ESLのモデルをユーザーである部品メーカーや自動車メーカーに提供している,ことを説明した。

 同氏の講演では,Freescaleが整備するチップの各種モデルの一覧表が印象的だった。コアのモデルだけでも3種類があるという。またユーザーに提供するモデルは2種類あり,うち一つはThe MathWorks, Inc.の「MATLAB」と連携するモデルになっていることが自動車業界らしかった。

コスト効率の高いエミュレータ

 次に登壇したのは,東芝の子井野誠治氏(セミコンダクター社 システムLSI事業部 マルチメディアSoC設計技術部 参事)である。同氏はEVEの論理エミュレータ/ハードウェア・アクセラレータ「ZeBu-XL」(Tech-On!関連記事4)をデジタル・テレビ用SoCのファームウェア開発に適用した事例などを説明した。Zebuのユーザー講演は,STMicroからもあった。STのLaurent Ducousso氏が,「ZeBu-XXL」(同5)をデジタル家電向けSoCのハードウェア-ソフトウェア協調検証に適用した事例を発表した。

 Ducousso氏によると,Zebu-XXLは以前に使っていた他社の論理エミュレータに比べて,安価で性能が良い,という。東芝の子井野氏もZubeの安価な点を評価する。「規模があまり大きなくてほぼ固まった状態でハードウェアをZubeに実装して,ファームウェアの開発に使うと,コスト・パフォーマンスが優れた環境が構築できる」(同氏)とした。なお,講演で子井野氏は,Zubeのデバガの性能を向上させることを求めていた。