そこで筆者もUP300xを着用して電車に乗り,周囲の様子を観察してみた。その結果,正面の席の乗客だけは,明らかに終始,筆者と目を合わせないようにしていると思えた。強いて言えば,他の乗客からも避けられているのか,筆者の両隣にもなかなか人が座らない。満員電車の場合は,人が密集していて目の前にいる人の様子くらいしか把握できないためか,筆者がHMDを装着していることに気付く人自体がほとんどいないようで,特に注目を集めることはなかった。そのため,付けている本人としては,満員電車では過ごしやすかった。電車の混み具合にかかわらず,HMDの表示画面部分を頭の上に跳ね上げた状態では,一般的なヘッドホンとほとんど差がないためか,周囲の視線を集めることはなかった。

 次に実際の画面の見え方についての感想をまとめる。今回は,座席に座ってデモ用のコンテンツを視聴してみた。画面を見るには,慣れが必要だった。最初のうちは,かなり意識を集中しないとHMD画面の表示が現実の風景と重なって,いわば「溶け込んだ」ように見えてしまい,見たい画像が見えなくなってしまう。意識を集中していても,現実の風景で人が動いたりするとそちらに意識が移ってしまい,HMDの画像が見えなくなる。特に,地下鉄壁面のカラフルな壁画や白っぽい壁に駅名やコンクリートの継ぎ目など,何か目立つものが見えるところを電車が走っている場合は,移り変わる背景に注意が移ってしまい,画面が見づらい。反対に,自分の前に濃色のスーツを着た男性が立ってくれるとそれほど意識を集中しなくても,画面を見やすくなる。

 数日使っているとある程度慣れてきて,見たいときに画面に意識を集中できるようになった。この状態になると,予想以上の没入感があると感じた。それでも,周囲の人の動きなどは一応見えているので,駅の乗降タイミングなどは分かる。幸い,電車を乗り過ごすこともなかった。

 編集部内で数人が着用した際,画面に表示される文字については,読みづらく,相当意識を集中しないと読めないのではないかという意見が出た。しかし,今回はUP300x起動時の警告文以外,細かな文字を読まなければならないコンテンツがなかったため,文字の視認性についてはあまりよく分からなかった。画面にまれに現れるテロップを読むくらいであれば,特に苦には思わなかった。

 通勤で使っていて特に不便と感じたのは電池寿命である。電池はアルカリ乾電池,Liイオン2次電池,Ni水素2次電池が使えるようになっており,どの電池を使っているのかを,設定画面から指定する。実際の製品では,三洋電機の「eneloop」が同梱される予定だ。今回,アルカリ乾電池を使ったところ,すぐ電池が切れてしまった。デモ用コンテンツの再生では,1時間強しかもたなかった。

 第3回では,実際の日常生活で使った使用感をまとめる。

―― 次回へ続く ――

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