図1 竹繊維PBS樹脂複合材料の成形試作品
図1 竹繊維PBS樹脂複合材料の成形試作品
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表1 物性表
表1 物性表
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図2 竹繊維植物由来ウレタン樹脂複合材のドアトリム試作品
図2 竹繊維植物由来ウレタン樹脂複合材のドアトリム試作品
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図3 竹繊維植物由来ウレタン樹脂複合材の試作品表面
図3 竹繊維植物由来ウレタン樹脂複合材の試作品表面
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 三菱自動車工業は,植物である竹繊維を強化材とした樹脂複合材料を開発,自動車内装部品に使えるめどをつけた,と「第17回ポリマー材料フォーラム」(高分子学会主催,2008年11月27日,28日,広島国際会議場)で発表した(講演番号2PA02)。竹繊維を自動車部品に使うのは初めて。植物由来の原料を使うことにより,二酸化炭素の排出量を減らすことが狙い。現在,量産化の検討を進めており,「既存材料の1.5倍程度になるレベルまでコストダウンしたい」としている。

 繊維化工程は,まず竹を四つ割にして節を取り除き,ある特殊な機械(未公表)で粉砕・解繊する。これまで竹の繊維化は,爆砕や蒸煮(水蒸気で加熱して繊維をほぐす方法)という方法で試みられてきたが,酢酸,ギ酸,アルデヒド,VOC(揮発性有機化合物)などが発生するため自動車用途には使えなかった。今回の方法ではそうした問題がないという。

 同社はこうして作成した竹繊維を,(1)PBS(ポリブチレンサクシネート)樹脂と(2)ポリウレタン樹脂---の2種類の樹脂に複合化した。いずれの樹脂も植物由来の原料を多用している。

 (1)のPBS樹脂は,糖やでんぷんを発酵させて得たコハク酸を,石油由来の1,4-ブタンジオールと直接脱水重縮合によってつくったもの。竹繊維とPBS繊維を絡み合わせてマット化し,熱プレス成形することによって成形した(図1)。植物度(植物由来材料が占める重量割合)は約83%という。

 同複合材料の物性値としては,実車に使えるレベルの機械物性を持っていることが確かめられた(表1)。実際に,2008年2月から各電力会社に実証走行試験車として配備された電気自動車「iMiEV」のテールゲートトリムに採用されたという。課題としては,加水分解しやすいために,添加する必要がある加水分解抑制剤が高価であることや耐熱性が低い(荷重たわみ温度が109℃)ことから採用部品が限られる点が挙げられる。現在,「iMiEV」の量産車にも採用できるかどうか検討中という。

 (2)のポリウレタンは,ポリオール成分とイソシアネート成分を反応させて得られる樹脂だが,その内のポリオールの大部分をヒマシ油ポリオールやヤシ油グリセリンに代えた。竹繊維にバインダ樹脂を添加してマット化し,そのマットを金型に敷き詰めて,反応射出成形機(RIM)で,ポリオール成分とイソシアネート成分を注入して,反応硬化させて成形した(図2,図3)。植物度は約60%という。

 同複合材料の物性値は,荷重たわみ温度が193℃など高い値を示している(表1)。ただし,自動車材料として一般的なPP(ポリプロピレン)樹脂と比べると,生産速度が遅く,製造コストがアップする問題があるため,今後改良を加えていくという。狙う用途は,ドアトリム基材,シート背板,天井材など。

 二酸化炭素の排出量削減効果については,ライフサイクル全体(原料採取から廃棄まで)の二酸化炭素排出量を試算したところ,従来の石油系PP樹脂と比べて,竹繊維PBS樹脂複合材料は約51%,竹繊維植物由来ウレタン樹脂複合材は約28%の削減を達成したという。

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