米IBM Corp.は,今後5年間で実現しそうな,人々の生活様式を変える可能性のある五つの技術を明らかにした(発表資料)。1)太陽電池をアスファルトや塗装材料,窓などに組み込む技術,2)個人の将来の健康状態を予測する技術,3)声を使ってWebサイトを閲覧する技術,4)買い物を支援する技術,5)物事を思い出すのを容易にする技術の五つである。

 アスファルトや窓などに組み込む太陽電池として,IBM社が挙げるのは薄膜太陽電池。太陽電池を幅広く採用するには,これまでの太陽電池セルの材料や製造プロセスは高価すぎる反面,薄膜太陽電池がこの状況を変えると同社は説明する。薄膜太陽電池はSiウエハーを用いて製造する太陽電池セルと比べて1/100程度に薄く,低コストで製造できるという。さらに,印刷装置で製造することができ,柔らかい素材に取り付けることも可能。このため,屋根だけでなく,ビルの壁面や窓,携帯電話機,ノート・パソコン,自動車,洋服などに組み込むことができるという。

 個人の将来の健康状態を予測する技術に用いるのは遺伝子地図(genetic map)。今後5年間で,医者は患者が生涯で直面しそうな健康面のリスクとそれを避ける方法を,特定のDNAの情報に基づいて教えることができるようになるという。さらに,製薬会社は遺伝子情報を用いて,患者一人ひとりに向けた効果的な薬を作ることができるようになるとする。

 声を使ったWebサイトの閲覧は,ユーザーが探している情報を言葉を使ってWebサイトから探し出し,その情報を言葉で聞くことを可能にする。キーボードなどを使わずに,メールやインスタント・メッセージを送ることもできる。これによって,読み書きができない人でも,Webサイトの情報を利用することができるようになる。インドのような国では,教育や政治などにおいて,書き言葉よりも話し言葉が多く使われるため,声を使ったインタフェースは他のインタフェースを飛び越えて普及するとIBM社はみている。

 買い物を支援する技術では,衣服を選ぶ際にユーザーを支援するシステムが実現するという。これによって,購入するものを決定する際に,店員の意見よりも自分自身の意見を反映しやすくなるとする。このシステムは試着室に設置されるもので,タッチ・スクリーンを搭載し,声で動作する。ユーザーは,このシステムを使って,既に選んだアイテムに合う衣服やアクセサリを選んだり,そのアイテムを交換したりすることができる。そして,一通り選び終わると,選んだアイテム一式がユーザーのもとに運ばれてくる仕組み。加えて,選んだアイテムを身につけたスナップ写真を,友人や家族などにメールなどで送り,意見を聞くことができるという。

 物事を思い出すのを容易にする技術では,日常生活の細かい出来事を携帯機器を使って記録や保存,分析し,適切な時間や場所で提供する。これによって,ユーザー自身にその物事を思い出させることが可能になる。例えば,ユーザーが特定の時間に特定の店を通りかかると,携帯機器がユーザーの位置を把握し,記録された会話の内容に基づいてその店で買い物をするように促すといったことができるとする(Tech-On!の関連記事)。