コニカミノルタ・グループの医用機器事業では,生産技術部門がデジタル・モックアップ(DMU)ツールを用いて生産指示用のコンテンツを作成している。設計部門が作成した製品の3次元モデルを受け取り,これを基に工程を設計して,各工程の作業内容を静止画像や動画で表現するもの。作成したコンテンツは生産指示用のコンピュータで表示させる。
 製品の量産立ち上げ時には,作業員がまだ不慣れで,作業を迷わずにスムーズに実行することは難しい。作業と同期して指示を表示すれば,作業員は次の作業が何かを知ることができ,スムーズに次の作業に移れる。その結果,量産の立ち上げが早くできることになる。
 このコンテンツの作成自体も早めている。設計が完了してから生産指示コンテンツの作成を始めたのでは,結局量産開始が遅れてしまう。設計内容が確定するのと同時期に,工程も確定させてしまうよう,コンカレント・エンジニアリングを積極的に推進している。

機能試作までに工程を前倒しで確定

 生産準備作業の開始は,設計側(コニカミノルタエムジー)主催の最初のデザインレビュー(仕様説明会)の前にまで早めている。生産技術部門(コニカミノルタテクノプロダクト)はこの段階でラフな3次元モデルを設計側から入手し,工程の設計を始める。工程の原案ができていれば,仕様説明会の席でより的確な指摘ができることになる。さらに,最初の試作(機能試作)までにほぼ工程を確定させ,量産直前の試作までに作業指示コンテンツの初版を作り,試作の作業に適用する(図1)。
 ITの導入がなければ,機能試作の次の製品試作の後から工程を設計し,量産試作で検証してさまざまな手配を実行する,という手順が普通。つまり,コニカミノルタ・グループの医用機器事業では,試作の役割が1回分ずつ前倒しになっている。
 仕様説明会の前後から,生産技術部門は設計部門の3次元モデルにアクセスし始め, DMUツールにデータを読み込み,それを用いて工程を検討する。本格的な検討作業をする時期は,仕様説明会後の2週間。この期間はDMUツールを使う前から変わっていない。「単に検証するだけなら,実は2週間はいらない。さまざまな可能性を検討して,提案をするための時間に当てるようになった」(コニカミノルタテクノプロダクト技術部生産技術グループの佐々木克司氏)。

コニカミノルタグループの医用機器事業における設計と生産技術の同時並行作業(コンカレント・エンジニアリング)
コニカミノルタグループの医用機器事業における設計と生産技術の同時並行作業(コンカレント・エンジニアリング) (画像のクリックで拡大)

DMUツールで工程設計

 ところで,設計部門の3次元モデルは,「仕掛かり中のものでも他の部門に対して公開している」(コニカミノルタエムジー開発センターの藤本顕夫氏)。早期から情報を伝え,後工程の作業を進めてもらうことが目的。デザインレビューの前に生産技術部門がデータを入手可能なのは,もともとこういう体制があるためだ。設計側が渡すというより,生産技術部門が取って行く。