「AMIMONだけが解じゃない」,1Gビット/秒の無線LANを米社が開発
米Quantenna Communications,Inc.は,高速無線LAN規格「IEEE802.11n」に準拠し,最大1Gビット/秒のデータ伝送速度に対応する送受信チップを開発,2008年12月からサンプル出荷を開始する。4×4のMIMO送受信回路を,切手サイズの小型パッケージに収めた。4×4MIMO対応の無線LANアクセス・ポイントを実現する際に,従来製品に比較して大幅に小型化できる。家庭やオフィスの無線LANアクセス・ポイントに向けるほか,テレビやゲーム機などAV機器への組み込みも狙う。日本メーカーへの採用を目指してアルティマと販売提携を結んだほか,バッファローとも提携したという。
LTCC基板を使ったSiPに
4×4によるMIMOでは,2×2MIMOなどに比較してデータ伝送量を大きくできることから,高速の無線LANアクセス・ポイントを実現できるとして期待されている。ただし多経路のRF送受信回路を作り込む必要があるため,回路面積が大きくなったり,フィルタやアンプなど多数の個別部品を実装する個所を必要とするなど,小型化に難があった。Quantenna社はこうした複雑な送受信回路を小型の1パッケージ品で提供することで,実装面積が削減できることを強みに,採用を働きかけていく考えだ。
チップの名称は「QHSシリーズ」。5GHz帯を使って最大600Mビット/秒に対応する「QHS600」と,2.4GHz帯を使って最大450Mビット/秒対応の「QHS450」,そしてこの二つを組み合わせて最大1Gビット/秒を稼ぎ出す「QHS1000」の3種類である。いずれのチップも,4×4MIMO対応のRFトランシーバ回路のほか,ベースバンド処理回路,MAC制御回路,パワー・アンプやスイッチ,ダイプレクサなどフィルタ回路までを集積した。京セラ製のLTCC基板を用いたSiP(system in package)であり,LTCCの層数は8層である。RFトランシーバ回路に90nmのCMOS技術を利用することで,4×4MIMOに必要な多経路の送受信回路を小型ICとして実現できたという。チップの消費電力は平均3W未満で,最大5W未満としている。
4×4MIMOに対応するほか,メッシュ接続のトポロジにも対応できる。これを使って,家庭やオフィス内でメッシュ・ネットワークを構築できるという。小型のネットワーク・ノードを家庭内に複数配置することで,アクセス・ポイントから離れた場所での伝送品質改善が可能という。「家庭内で,これまで何らかの理由により届きにくかった場所でも,メッシュ接続を使うことで品質を改善できる」(Quantenna社)。
同社は無線LAN用アクセス・ポイントのほか,AV機器に組み込んでHDTV動画のストリーム伝送用途も想定する。この場合には,低遅延型のH.264符号化/復号化チップと組み合わせて利用する。「低遅延型のH.264チップを使えば,高品質のHDTV動画を家庭内で無線でやりとりできる」(Quantenna社)。家庭のAV機器におけるHDTV動画向け無線ICでは,イスラエルAMIMON社の製品が関心を集めており,国内メーカーへの採用も進んでいる(Tech-On!の関連記事)。Quantenna社は,AMIMON社の動きに対して,「AMIMON社のソリューションは長くは続かないだろう。なぜなら,AMIMON社の技術はスタンダードではなく独自技術のためだ。当社の技術は標準規格であるIEEE802.11nに準拠しているため,将来的に強みになる」(Quantenna社)とするなど,競合として強く意識しているようだ。Quantenna社の競合メーカーはこのほか,同様に無線LAN用ICを手掛ける米Atheros Communications,Inc.や米Broadcom Corp.などである。
Quantenna社は2006年1月に米国で設立されたベンチャー企業で,これまでに米Sequoia Capital社など大手ベンチャー・キャピタルから2780万米ドルの資金を調達している。Quantenna社のCEOであるBehrooz Rezvani氏は,VDSL系のベンチャー企業であるIkanos Communications,Inc.の創業者である。












