ガス・センサには半導体式,電気化学式,接触燃焼式など複数の方式がある(図9)。それぞれ検査対象ガスの濃度範囲や使い勝手が異なる。このうち,嗅覚センサには半導体ガス・センサが用いられることが多い。

図9 センサの能力とそれに応じた応用分野 センサの高感度化に応じて応用分野も拡大する。既存のガス漏れ報知器などへの応用では,ppmレベルから1%程度のガス濃度を検知する感度があれば十分だった。しかし,食品の開発などに用いる微妙なにおいの検出には,この感度では不十分。きつい悪臭を検知する場合でも数十ppbの感度が必要である。こうした用途には高感度な半導体ガス・センサが必要になる。一方,麻薬や地雷の探知,ガンの探知など犬と同等の嗅覚を再現する用途では,pptレベルの感度が必要。ここではバイオ・センサなど新しい方法の開発が求められている。
図9 センサの能力とそれに応じた応用分野 センサの高感度化に応じて応用分野も拡大する。既存のガス漏れ報知器などへの応用では,ppmレベルから1%程度のガス濃度を検知する感度があれば十分だった。しかし,食品の開発などに用いる微妙なにおいの検出には,この感度では不十分。きつい悪臭を検知する場合でも数十ppbの感度が必要である。こうした用途には高感度な半導体ガス・センサが必要になる。一方,麻薬や地雷の探知,ガンの探知など犬と同等の嗅覚を再現する用途では,pptレベルの感度が必要。ここではバイオ・センサなど新しい方法の開発が求められている。 (画像のクリックで拡大)

 一般に,多くのガス・センサの能力は生物の嗅覚の感度に劣る。ただし,半導体を用いた高感度なガス・センサは,他方式のガス・センサでは対応できない低濃度の原因物質でも検知できる。工場の悪臭の原因物質である濃度が20~30ppb(10億分の1)と低い硫化水素やVOC(volatile organic compounds)は,半導体ガス・センサで検知できる。

 半導体ガス・センサは,感度が優れるだけではなく,応答速度の速さ,安定性,メンテナンスの容易さなどの利点がある。例えば,日産自動車はアルコールを検知して,飲酒運転を防止するシステムを開発している(図10)。

図10 ガス・センサで飲酒運転を防止 日産自動車が開発した飲酒運転防止システムを採用したコンセプト・カーに搭載されているセンサ。車内に複数設置した半導体ガス・センサで検知した情報を比較し,運転手が飲酒したかどうかを判別する。このシステムでは,ガス・センサのほかに,運転手の顔の画像や車両の挙動の検知など複合的な情報を勘案し,飲酒運転かどうかを判別する。写真はシフト・レバーに取り付けられた半導体ガス・センサ。
図10 ガス・センサで飲酒運転を防止 日産自動車が開発した飲酒運転防止システムを採用したコンセプト・カーに搭載されているセンサ。車内に複数設置した半導体ガス・センサで検知した情報を比較し,運転手が飲酒したかどうかを判別する。このシステムでは,ガス・センサのほかに,運転手の顔の画像や車両の挙動の検知など複合的な情報を勘案し,飲酒運転かどうかを判別する。写真はシフト・レバーに取り付けられた半導体ガス・センサ。 (画像のクリックで拡大)