産業技術総合研究所は,イオン性液体の電解液を用いた色素増感型太陽電池で7.6%のセル変換効率を実現した(発表資料)。イオン性液体の電解液を用いた色素増感太陽電池としては「世界最高レベル」(産総研)という。今回開発した色素増感型太陽電池は,従来のRu(ルテニウム)錯体を用いた色素増感太陽電池と比較して,耐久性の向上や材料コストの低減が図れるとする。

 光吸収材料に新たに開発した「MK-2」という有機色素を用いることで実現した。有機溶媒の電解液に「クマリン色素」という色素を用いると,8%の変換効率を得られたが,色素から酸化チタン電極への電子移動効率が低い,電子寿命が短いといった課題があった。これを解決するために,分子設計技術を用いてMK-2色素を合成したとする。

 耐久性の向上は,難揮発性のイオン性液体の電解液を使用することで実現した。紫外線をカットした疑似太陽光照射での比較的穏和な条件下では,十分な耐久性を持つという。有機溶媒の電解液を用いたRu錯体の色素増感型太陽電池は,耐久時間が100時間以下であるのに対し,今回開発した太陽電池は2000時間以上と長い。有機電解質オリゴマー構造を有するゲル化剤(Tech-On!関連記事)と難揮発性のイオン性液体から成る電解質を用いて耐久性を高めた場合でも,セル効率5.5%を確保している。

 本研究開発は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の産業技術研究助成事業の一環として行った。

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有機色素太陽電池の試作セル(左)および有機色素「MK-2」の分子構造(右)
有機色素太陽電池の試作セル(左)および有機色素「MK-2」の分子構造(右)
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