千葉大学と日本電気(NEC)は,無線LANの各端末で,任意の優先度に基づいて通信品質を保証できる技術を共同開発した(発表資料)。音声や画像を受信する端末に高い優先度を割り当てて,音声や画像の再生品質を高い状態に維持するといった用途を想定する。AP(アクセス・ポイント)側の制御だけで実現できるため,端末側は既存の無線LAN機器を変更する必要がない。

 APが端末からデータ・パケットを受け取った際に,端末ごとに定めた優先度に応じた確率でパケットを廃棄(受信拒否)する。このとき,送信元の端末に対してACK信号を送信しない。端末はACK信号が返って来ないことで,送信失敗と判断してデータ・パケットを再送信する。無線LANの送受信プロトコルにおいては,データ・パケットの再送信には一定の待ち時間が必要である。文字データなどを送受信する非優先端末のデータ・パケットを高い確率で受信拒否することで,データ・パケットの送信間隔を長くさせ,非優先端末の実効伝送速度を抑える。一方で映像や音声のデータを送受信する端末を優先端末とし,受信拒否確率を低くすることで,優先端末のパケット衝突頻度を抑えて,音声や画像の品質を向上できるという。

 今回開発した技術では,差異化のための優先度の数を任意に設定できる。優先端末の要求性能を満たしながら,非優先端末が残りの帯域を最大限に使用できるよう,端末数や優先端末のスループットに応じて,各端末の受信拒否確率を動的に調整できるという。千葉大学とNECは今回の技術を,2008年11月13~14日に福岡県飯塚市で開催された電子情報通信学会の情報ネットワーク研究会で発表した。