市場調査などを手掛ける矢野経済研究所は,パワー半導体の世界市場規模が2008年に前年比4.3%増の168億米ドルに達するとの調査結果を発表した(発表資料)。矢野経ではパワー半導体を「電力のスイッチングや変換,制御に必要な半導体素子」と定義しており,パワーMOSFETやIPD(Intelligent Power Device),ダイオード,IGBT,パワー・モジュールを含めている。調査は2008年7月~9月に,半導体メーカーおよび機器メーカーにヒアリングしたもの。

 この調査によれば,2003年から2005年にかけてパワー半導体の世界市場規模(出荷金額ベース)は2ケタの成長を続けてきたが,2006年以降は1ケタで推移している。2007年は前年比5.2%増の161億米ドルだった。2006年後半から米国経済の停滞などを受けて厳しい市況が続いているといい,2008年の成長率は2007年を下回る4.3%と予測した。2004年頃から液晶テレビやプラズマ・テレビの低価格化が進んだことも,パワー半導体の販売単価に大きく影響しているという。ただし,携帯機器用Liイオン2次電池の保護回路向けやエアコンのインバータ向けの需要は伸長している。

今後,需要を引っぱるのは環境・省エネ分野

 2009年の市場規模は前年比4.2%増の175億米ドルになる見込み。2009年後半から,環境対策や省エネルギーの分野で需要が高まると矢野経は予測しており,2011年の市場規模は200億米ドルを超えるとみている。

 今後,需要の伸びが期待できる分野として矢野経は太陽光発電や風力発電,ハイブリッド自動車や電気自動車を挙げる。2010年には太陽電池メーカーの増産体制が整うため,これに合わせて生産体制を増強する半導体メーカーが多いという。さらに,エアコンのインバータ化に関して,中国政府がエアコンの省エネに関する制度化に乗り出した場合,中国エアコン市場のインバータ採用率が現在の3~4%から大幅に伸びるとみられ,これに伴ってパワー半導体の需要も増加すると予測している。