【ファミコンはこうして生まれた】 第8回:ファミコン誕生,家庭用ゲーム機の代名詞に
本体の基本仕様を7項目に整理
LSI開発とソフト開発環境にメドが立ち始めた1982年10月ころ,ようやくファミコン本体の具体的な設計がスタートした。本体の設計を進めるに当 たって上村はまず,米Coleco社のゲーム機などを意識しながら七つの基本仕様をまとめた(表1)。この時点では,ユーザが操作するコントローラには, 業務用ゲーム機で使われているジョイスティック・レバーを使う考えだった。
表1 ファミコン設計当初の本体の仕様
- (1)本体にはキーボードを付けない。
- (2)パソコン・イメージから抜け出す。
- (3)ゲーム専用機であるがオモチャ臭除く。
- (4)コントローラは二人用で,できれば本体への収納を考慮する。
- (5)ROMカセットの寸法はアナログ・力セッ卜・テープの大きさとほぼ同一とする。
- (6)本体にはROMカセッ卜用コネクタ,電源スイッチおよびコントローラ・コネクタ,ACアダプタ・ジャック,RFアダプタ・ジャックを付ける。
- (7)コントローラには,ジョイスティック・レバーと2個の決定ボタン,スタート・ボタン,ポーズ・ボタンを付ける。
本体の外観デザインにも凝ろうとした上村は,開発グループの中核の一人である中川克也(現,開発第二部 課長)と,機構設計を担当する湯川眞行(現,開発第二部 係長)を連れてリコーのデザイン事務所を訪問している。
従来にない製品イメージを外観に与えるにはどうすべきか。この問いに対する意見を専門家に求めた。リコーのデザイナは,外観からは値踏みができないデザインを採用したらよいと説明した。たとえば,外観がオーディオ機器に似ていると消費者は価格や商品価値を先入観で判断してしまう。パッと見ただけでは,なんとも評価できない外観にすべきだと言われた。
ただし,こうした助言は生かしきれなかったと上村は振り返る。出来上がった本体の外観は「面白味のないただの箱になってしまった」(湯川眞行)。
唯一遊び心が盛り込めたのはROMカセットの取り出しレバーである(図2)。これは開発第一部 部長の横井軍平がアイデアを提供した。ROMカセットを手で挿入し,そのまま手で引き抜くようにしても実用上は問題ない。横井は,レバーを押すとカセットがポンと飛び出すという仕掛けそのものを子供は喜ぶのではないかと考えた。ゲームをしないときでもガチャガチャとやって遊べる。子供向けの製品にはこうした配慮が必要だという発想である。このアイデアを上村と湯川はすぐに受け入れた。


















