すると,その下からパッケージ表面に「Nintendo」「ARM」の文字がくっきりと刻まれたLSIが姿を現した(図3)。これが,最大動作周波数66 MHzの「ARM9」と同33MHzの「ARM7」を内蔵したデュアル・コア構成のマイクロコントローラである。グラフィックス処理などのメインの処理はARM9に,無線送受信やタッチ・パネルなどはARM7が担うもようだ。放熱用の大型のヒートシンクや空冷ファンなどは付いていない。ただし,取り外したゲーム・カートリッジのソケットをよく観察すると,底部に櫛形の空気孔が設けられていた。マイクロコントローラの発熱は,ここから逃がす設計のようだ。


図3 心臓部の回路が片面に集中
メイン・ボードの写真。縦横の寸法は141mm×76mm(最長部)。無線モジュール,マイクロコントローラにはシールドとして金属板がかぶせてあった。(クリックで拡大します)

 マイクロコントローラの隣には「F」という刻印と「82DBS02163C―70L」という型番を記したLSIがある。非同期型SRAMインタフェースを備えた富士通製の32MビットFCRAMのもようだ注1)。SRAMのほかには,3次元グラフィックス処理LSIや音源LSIなどは見当たらない。部品コストを抑えるために,これらの機能はすべてマイクロコントローラに集積したとみられる。

注1) 外付けメモリは複数メーカーから購買しているもようだ。2004年11月に開催された組み込み機器関連の展示会「Embedded Technology 2004」で英ARM Ltd.が出展したメイン・ボードの同じ場所には,伊仏合弁のST Microelectronics社のSRAMチップが実装してあった。

無線モジュールを探る

 技術者たちが次に目を向けたのは,マイクロコントローラ左側にある金属シールドだ。シールドの右側には,アイペックスのアンテナ接続用同軸ケーブルのコネクタが実装されている。このためシールドの下に隠されているのは無線回路とみて間違いない。ニンテンドーDSは2.4GHz帯を利用した無線機能を備える。無線LANの国際規格「IEEE802.11」に準拠したプロトコルと,独自プロトコルの2種類を搭載している。このためIEEE802.11に準拠した無線LANチップが組み込まれているはずだ。