任天堂は,初代の「ニンテンドーDS」を2004年11月に米国で先行発売した。日経エレクトロニクス分解班は発売と同時に製品を入手し,内部の構造を分析。以下は,その結果を解説した記事である。実装された部品や基板の端々から,1万5000円という売価に見合うように,同社がコスト削減を進めたさまが浮かび上がってくる。(以下の本文は,『日経エレクトロニクス』,2004年12月6日号,pp.30-33から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります。写真:林幸一郎)

図1 いよいよ出荷開始
無駄な装飾がほとんど見られないシンプルなデザイン。重さ は約275g。手にしてみると,見た目より軽い印象を受けた。上面ディスプレイが開く角度は,無断階で調整できる。

 「へー,これかぁ」

 「結構軽いね。あっ,この画面がタッチ・パネルなんだ」――。

 任天堂が2004年12月2日に発売した,ディスプレイを2つ備える携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」(図1)。日本より10日ほど早く発売した米国で,実機を開けてみた。

 分解作業を依頼したのは,米国シリコンバレーにある日本のエレクトロニクス・メーカーに勤務する4人の技術者(図2)。既にルーペや小型ドライバーなど愛用の道具を携え,分解会場となったオフィスの小部屋に集まっている。技術者たちが目を輝かせながら取り囲むテーブルの上には,その日発売されたばかりの銀色に輝く端末が置かれている。


図2 小さな基板と格闘
米国シリコンバレーに拠点を構える日本のエレクトロニクス・メーカー3社の技術者が顔をそろえた。

 「じゃ,早速始めますか」

 まずは筐体裏面から。電池を収納するフタのネジを取り外す。顔を出したのは放電容量が850mAhのLiイオン2次電池。「Made in China」とあるが,メーカー名は刻印されていない。ニンテンドーDSはこの電池を使い最長で約10時間動作する。従来の「ゲームボーイアドバンスSP」も内蔵するLiイオン2次電池で最長10時間動作するが,放電容量は600mAhと少なかった。ディスプレイを2枚に増やしたことや,2個のCPUコアを集積したマイクロコントローラを搭載したことなどが,ニンテンドーDSの消費電力が増えた原因とみられる。