LED照明装置
LED照明装置 (画像のクリックで拡大)
HTVの飛行イメージ
HTVの飛行イメージ (画像のクリックで拡大)

 パナソニック電工は,同社のLED照明装置「PSL=Permanent Solid-state Lighting」が宇宙航空研究開発機構(JAXA)の開発する国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)用補給機「H-II Transfer Vehicle(HTV)」に採用されると発表した(発表資料)。同照明装置は2010年以降に打ち上げられるHTVに順次使用される見込み。パナソニック電工は,2009年夏ごろからJAXAへの納入を開始する予定である。同社によれば,宇宙船内の照明としてLEDが採用されるのは世界で初めてという。

 今回採用が決まったLED照明装置は,十分な強度を持つLEDパッケージを採用し,周辺をシリコーン材で充填する。これまで宇宙船内の照明として使われていた蛍光灯は,ガラス管や水銀を使用しているため,破損の際のガラスや水銀の飛散という課題を抱えていたが,これを解決したという。打ち上げ時の激しい振動や加速度に耐える構造を採用。対流のない無重量状態でも輻射と伝導のみの放熱で,器具表面や電子部品の許容温度を超えないよう設計したとする。密閉空間で使用されるため,難燃性かつ有害ガスを発生しない材料を採用した。

照明装置の断面イメージ
照明装置の断面イメージ (画像のクリックで拡大)

 20個のLEDパッケージで構成したことによって,いくつかのLEDが点灯しなくなった場合でも,照明装置として機能する。照明装置内の電源部を2系統に分け,10個のLEDに対し1個の電源を使うことで,電源部の不具合に備えた。

照明装置の内部構成イメージ
照明装置の内部構成イメージ (画像のクリックで拡大)

 光色は白色。消費電力は約29W。入力電圧は直流120V。器具の光束は約400lm。外形寸法は長さ673mm×幅167.5mm。

 HTVは,有人のISSへの物資輸送手段としてJAXAが開発中の無人補給機。1台当たり2~4台のLED照明装置を使用する予定である。HTVをISSに結合した後,ISSの搭乗員がHTVから資材を積み下ろしたり,HTVへ不用品を積み込む際の作業場所に設置する。

照明装置のHTV内での使用イメージ
照明装置のHTV内での使用イメージ (画像のクリックで拡大)

 今回採用が決まったLED照明装置は,JAXA主催の事業公募制度「宇宙オープンラボ」にパナソニック電工が2005年度に応募し,採択されたもの。その後,概念検討や仕様目標値の策定,部品・材料の試験などを実施し,2007年度からHTV船内用の照明装置の開発を始めた。今後,パナソニック電工はJAXAと共同でISS内での使用に向けたLED照明装置の課題検討や開発を進めるという。