図1
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図2 低照度撮影が可能なことをアピール。最高ISO感度は2500だが,それはノイズが大変多く,「撮れないよりは撮れた方がよい」というニーズに向けたもの。
図2 低照度撮影が可能なことをアピール。最高ISO感度は2500だが,それはノイズが大変多く,「撮れないよりは撮れた方がよい」というニーズに向けたもの。
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図3
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図4
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図5 シャープ製の大ヒット・シリーズ「PANTONE」も,「顔」にヒンジに起因する切れ込みがある。
図5 シャープ製の大ヒット・シリーズ「PANTONE」も,「顔」にヒンジに起因する切れ込みがある。
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 2008年11月下旬以降に発売される「930SH」は,際立ったカメラ性能を実現している(図1,発表会全体の記事iPhoneの外付け電池・チューナーの記事)。プレゼンテーションでは,800万画素のCCDを採用したという以外はほとんど触れられていなかったが,記者会見場で聞き込んでいくと,想像以上に本格的なカメラを備えていることがわかってきた。

 携帯電話機のカメラ性能は一般にここ2年ほど,画質が低下し続けてきた。携帯電話事業者の低価格化要求の高まりや,ワンセグなどの新機能の搭載といった変化に影響されたためだ。しかし「今回は全く違う。原点に立ち返って,ユーザーが安心してコンパクト・カメラを持ち歩かずに済む機種を作りたかった。こうしたニーズは厳然として今もある。930SHの画質は,カメラ付き携帯電話機として過去最高の水準と自負している」(シャープの企画担当者)。

 カメラ機能に関する930SHの主な特徴は次の通り。

●光学サイズ(光電変換面の大きさ)が1/2.5型と大きい
1/2.5型の採用はコンパクト・カメラで一般的だが,携帯電話機に搭載することは極めてまれ。高い感度が期待できる。実際,ISO感度が800でも「鑑賞に堪え得る」(シャープ)ほどノイズが少ない(図2)。
CMOSセンサではなくCCDを用いたのは,主に同社の評価の中で画質が優位だったから。CCDの画素ピッチは,1.75μmほどとみられる。CCDはシャープ製である。

●機械式シャッターを備える
もともとCCDを採用しているので,機械式シャッターを装備していないCMOSカメラのように,高速で移動する被写体を撮っても,被写体が画像の下に行くにつれてズレるという問題は生じない。それでも機械式シャッター備えたのは,現行のデジタル・カメラがそうであるように,インタレース読み出しに起因する櫛の歯状の画像のズレを皆無にするためと考えられる。ただし,今回採用したCCDの読み出し方式は未確認である。

●ND(減光)フィルタを内蔵する
晴天の屋外での撮影など高照度の被写体を撮った時の画質を高められる。NDフィルタを内蔵した国内向け機種は,ソニー・エリクソン・モバイル・コミュニケーションなどがかつて販売していたが,今はあまり例がない。

●930SHの外形寸法が十分に薄くて細い
カメラ・モジュールを小型にしたので,携帯電話機が大きくない。具体的には,折り畳み時に(長さ)105mm×(幅)48mm×(厚さ)15.2mmである。カメラ部の突起も1~2mmほどだろうか,目立つ印象を受けなかった(図3~4)。1/2.5型の撮像素子を使う機種として大変薄いことはもちろん,幅がシャープ製品には珍しく48mmであることも注目に値する。女性など手が小さめの人でも持ちやすい。
薄型化は,屈折率がプラスチックよりも高いガラスのレンズを採用することなどで実現した。光学的な解像力については,会場に展示されていたA3判のサンプル写真1点を見た限り,低いものではなかった。ただし,背景のぼやけ具合は,コンパクト・カメラほどきれいではなかった。
デジタル・ズームを利かせないときの画角は,35mmフィルム判換算で29mmと広め。なお,各種のアンテナは,カメラ・モジュールと同様,ヒンジのそばに実装されている。

●カメラ用の画像処理ICを備える
本ICは,ノイズ除去能力の向上やシャッター間隔の短縮などに大きく寄与した。ベースバンドICにカメラ関連の処理を担わせていては,実現不可能な水準に達したという。シャープはカメラ・モジュール用画像処理ICを「ProPix」と呼ぶ。
800万画素もあると一般にはJPEG符号化にかなりの時間を要する。しかし,930SHはJPEG符号化をバックグラウンド化して,次の1枚まではほとんど待たずに撮れるようにしていた(本処理を,どのICが担っているかは不明である)。
こうした工夫により,韓国製の高画素のカメラ付き携帯電話機などに比べて,930SHは使い勝手の面で幾分,優位に立っていると感じられた。

●撮るときに自然に構えられて,通話もしやすい
筐体の開き角は170度ほど。シャープ社内のテストによれば,これが最も多くの人にとって使いやすい角度だったという。

●ブログへの写真投稿が簡便
撮影後に「送信」のソフト・キーを押すと,写真付きの電子メールを使って,あらかじめ指定したブログに写真をアップロードできる。こうした機能は「SO905iCS」なども備えていたが,違いは「アップロードに使う電子メールのテンプレートに,投稿に必要なパスワードを持たせておけること。わざわざ入力する手間を減らせた」(シャープ)。

 カメラ以外にも930SHは多くの美点を備える。その中でも,目を引いたのは次の2点である。

●「顔」がすっきりしている
ここでいう顔とは,上部筐体の上面を指す。顔には意匠上「不要な線(切れ込み)がないほど良い」(ソフトバンクモバイルの企画担当者)が,一般的なヒンジを使うと,切れ込みができてしまう(図5)。
これを避けるため,930SHは「センターヒンジ」と呼ばれる珍しいヒンジを採用した。上下の筐体のほぼ真ん中にヒンジが位置するものである。これを用いたことは,前述の170度ほどの開き角の実現にも寄与したという。

●時間やパーセンテージで電池残量が分かる
3本のバーで表示することが当たり前の残量表示を刷新した。旧来の電池残量と数秒おきに表示される。精度は,そこそこといえるレベルのようだ。「寒冷な環境下ではズレが大きくなるものの,それでもないよりはずっとユーザー・フレンドリー」(シャープ)である。

■訂正・申し入れ
画像処理LSI「ProPix」は自社設計・製造としていましたが,誤りでした。また電池残量の精度について表現を改めました。本文は既に修正されています(11/4 17:15)。

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