日立金属は,2008年度中間期(2008年4~9月)連結決算結果を発表した(発表資料)。売上高は前年同期比2%増の3537億円,営業利益は同12%増の297億円だった。自動車関連業界向けの工具や部品,液晶パネル関連材料や携帯電話機用部品などの需要が堅調だったとする。また,原料高騰の影響があったものの,価格の見直しによる売上高の増加やコスト削減により増益にできたという。

 金型・工具鋼材料や切削工具,電子金属材料,射出成形機用部品などを扱う「高級金属製品」,磁性材料や携帯電話機用部品などを扱う「電子・情報部品」事業,耐熱鋳造部品や各種鋳物管継手などを扱う「高級機能部品」事業の分野別の業績は以下の通り。高級金属製品事業は,売上高が前年同期比11%増の1576億円,営業利益が同16%増の146億円だった。同社では,2008年4月から電子金属材料や電子部品の一部を電子・情報部品事業から高級金属製品事業にセグメント移管している。この移管分の売上高124億円,営業利益7億円を除いても,高級金属製品事業は増収増益となった。各種ロールが国内および中国で好調だったほか,自動車向けの工具も好調だったとする。一方,電子金属材料ではメモリ業界の不調からリード・フレームなどのパッケージ材料が不調だった。

 電子・情報部品事業の売上高は前年同期比12%減の845億円だった。セグメント移管分を除けば,実質同1%の微増とする。営業利益は,セグメント移管の影響を含めても同10%増の107億円だった。フェライト磁石などの硬質磁性材料が北米の自動車業界の不調の影響を受けたとする。希土類磁石については,用途が幅広く,全般的に好調だった。軟質磁性材料のうち,変圧器に向けたアモルファス金属材料は中国やインドを中心に売上高が大幅に増加したという。携帯電話用部品では基地局向けのアイソレータの売上高が中国・インド市場で増加した。

 高級機能部品事業の売上高は前年同期比1%増の1097億円,営業利益は同5%減の67億円だった。住宅業界の低迷を受けて配管の売上高が減少したが,自動車の排気系に向けた鋳造製品は増加,同じくアルミホイールは前年同期並みだった。

 2008年度通期(2008年4月~2009年3月)の業績については,2008年4月に発表した予想数値(売上高は前年度比1%増の7100億円,営業利益は同2%増の610億円)を据え置く。これについて同社は,「既に9月の受注については計画より10%減少するなど,第2四半期後半からは下ブレの様子が見え始めているが,11月以降の状況を現段階で見極められないため」と説明する。今後同社のすべての事業領域での不況が見込まれるわけではないようだ。例えば,変圧器の効率を高めるために有効なアモルファス金属材料は中国やインドでの伸びと,米国での規制改正に伴う需要増が見込めるという。ロール関連や,自動車の軽量化に欠かせないアルミホイールなども長期的には伸びると予想している。また,現状でも原料価格は下落し始めており,同社は下期のプラス要因としてはたらくと予想している。