モータ大手の日本電産は,2008年7月~9月期の決算を発表した。売上高は前年同期比1.4%増の1932億5600万円,営業利益は同16.4%増の220億8700万円,純利益は同37.8%増の127億3100万円と増収増益。上期(2008年4月~9月)では売上高と営業利益の両方で過去最高を更新している。

 主力のHDD向け小型モータは上期の出荷数量が前年同期比17%増となり,円高の影響を受けながらも売上高を2%伸ばした。特に2.5インチ品は金額,数量ともに前年同期から4割強,増加したという。「ネットブック(低価格ノート・パソコン)向け需要が伸びている。80Gバイト品や120Gバイト品など,技術的に『枯れた』,開発費用のかからない品種が売れたおかげで利益にもいい影響が出た。アナリストはネットブックに採用されるのはフラッシュ・メモリと予測していたようだが,フタを開けてみれば7~8割がHDDを搭載している。この市場はコストがモノを言う。来年,再来年にはHDDが100%載る」(代表取締役社長の永守重信氏)。

日本電産の名物社長,永守重信氏
日本電産の名物社長,永守重信氏 (画像のクリックで拡大)

 同社はHDD向け小型モータで世界市場シェア約75%(同社推定)を占めている。今後のHDD業界に関して永守氏は「当然再編は進む。HDDメーカーも今後は性能よりコスト。コスト対応力のあるところが勝つ」とした。自社の製造コスト削減にも余念がない。「タイ工場はラインも短くなり,製造装置も小さくなった。コスト効率は上がっている。顧客に納得してもらえるよう販売単価は適切に下げ,それでも利益が出るようコストを削減する」(同氏)。下期(2008年10月~2009年3月)の市場シェアは75~80%程度になる見込み。「シェア拡大は追わない。80%を超えると市場として健全ではないからだ。あとの20%は当社の特許ライセンスを受けて他社に頑張ってもらいたい」(同氏)。

通期予想も増収増益

 通期(2008年4月~2009年3月)の業績予想は前回発表のまま据え置く。売上高は前年度比7.8%増の8000億円,営業利益は同17.1%増の900億円を見込む。「円高,円高というが円高は悪い影響ばかりを与えるわけではない。当社は8割以上を海外,主に東南アジアで生産している。米ドルに対してタイ・バーツなどの東南アジアの通貨は安くなっているので,製造コストは下がる」(永守氏)。

 友好的買収を提案している東洋電機製造については「(買収に関する東洋電機製造からの)質問に誠意をもって回答していく所存。しかし文章では100ページ書いても伝わらないことがある。対面して話し合えればいいのだが」(永守氏)と,交渉が難航していることをうかがわせた(Tech-On!関連記事)。