半導体検出器を用いたヒト用PETの試作機
半導体検出器を用いたヒト用PETの試作機
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空間分解能の比較。左の画像が今回の技術によるもの
空間分解能の比較。左の画像が今回の技術によるもの
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 北海道大学と日立製作所は,半導体検出器を用いたヒト用のポジトロン断層撮影(PET)技術を開発した。半導体検出器を用いた小動物用のPETは,これまで存在していたが,「ヒト用は世界初」(日立製作所)。既に,開発した技術を利用して,腫瘍をはじめとするヒトの診断画像の撮影に成功しているという。現在は研究開発段階であり,「あと7年の間に実用化を目指す」(同社)考えである。

 半導体検出器を用いる利点は,取得する診断画像の分解能が高まること。今回の技術では,空間分解能3mmの識別が可能という。

 従来のヒト用PETは,半導体検出器ではなく,シンチレータと呼ぶ結晶と,光電子増倍管と呼ぶ増幅器で,薬剤から放出されるガンマ線を電気信号に変換していた。「間接的に電気信号に変換する方式であるため,分解能に限界があり,空間分解能は6~10mm程度だった」(日立製作所)。

 今回のヒト用PETに採用した半導体検出器は,CdTe結晶と電極を積層したもの。試作装置には,この検出器を7万6032個搭載した。半導体検出器の高い分解能を生かすため,画像処理用ASICも開発した。

 だが,実際の医療の現場で応用するためには,「こうした分解能の向上だけでなく,その性能を臨床的な価値に結び付けることが必要」(日立製作所)となる。このため今後は,この技術が医学的にどのような効果を生むかについての検証を進めていくという。