連載最終回の今回は,Google社でAndroid事業を担当するAndy Rubin氏のインタビューをお届けする。(以下の本文は,『日経エレクトロニクス』,2007年12月17日号,pp.59-60から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
Andy Rubin氏 米Google Inc. Director of Mobile Platform(写真:栗原 克己)
Andy Rubin氏 米Google Inc. Director of Mobile Platform(写真:栗原 克己) (画像のクリックで拡大)

Andy Rubin氏
米Google Inc. Director of Mobile Platform

──Androidによって,携帯電話業界にどのような変化を起こしたいと考えていますか。

 ソフトウエア開発のためのオープンで標準的な基盤があれば,携帯電話の業界にさまざまな革新が起こるはずです。電子機器の歴史を見れば,多くの分野で素晴らしい製品が事実上の標準となり,他の人たちがそれに合わせて製品やサービスを開発してきたことが分かります。古くは電話もそうですし,最近ではパソコンも,インターネットもそうでした。WindowsやTCP/IPといった事実上の標準の上で,多くの革新が起こっています。

 しかし携帯電話業界は考え方が違っていた。先に皆で標準規格を決め,それに合わせて製品を開発するという順序でした。そこで我々は,インターネットやパソコンの世界の文化を携帯電話業界に持ち込みたいと考えました。まず現時点でできる最高のものを目指してAndroidを開発し,それを完全に公開して普及させる。実際に使えるソフトウエアを提供することによってオープンな標準を確立するというのが,我々の選んだアプローチです。

 現在,Google社の数百人の開発者と,Open Handset Alliance(OHA)参加企業の数百人の開発者がAndroidの開発に携わっています。はっきりした金額は公開できませんが,とても大きな投資です。Google社にとっては,それだけ重要なプロジェクトなのです。

──Androidが「フリー」で提供されていても,いざ機器メーカーが利用するとライセンス費用が発生する恐れはないのでしょうか。

 Androidとして提供する部分は,Google社が開発したものもOHA参加企業が開発したものも,すべて無償公開します。ソース・コードを寄贈する企業には,その特許も寄贈してもらいます。例えば,今回メディア処理向けフレームワークのソース・コードを提供した米PacketVideo Corp.は,同社の特許を含む部分も無償で公開し,提供することを決断してくれました。それは,これからソース・コードを寄贈する他の企業にも倣ってもらいます。