図1 開発したITOナノ粒子の電子顕微鏡写真(上)とそれを使った透明導電フィルムの特性
図1 開発したITOナノ粒子の電子顕微鏡写真(上)とそれを使った透明導電フィルムの特性
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図2 ITOナノ粒子をロール状の樹脂フィルムに塗布したもの(左)と同粒子を使ったインクジェットプリンター用のインク(右)
図2 ITOナノ粒子をロール状の樹脂フィルムに塗布したもの(左)と同粒子を使ったインクジェットプリンター用のインク(右)
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 日立マクセルは,粒径20nm程度のITO(酸化インジウムスズ)粒子を使った塗布型の透明導電フィルムを開発,「CEATEC JAPAN 2008」に出展した。粒子径をナノスケールにすることによって,塗布型でも光学特性が向上したのが特徴という。フレキシブルなタッチパネルなどの用途を狙う。「2年以内に実用化したい」としている。

 ITOをナノ粒子化できたのは,水熱合成法(高温高圧の熱水の存在下で行う合成法)に工夫を加えたためという。詳細は明らかにしないが,同社が得意とする磁気記録向けの酸化鉄の合成法を応用したとしている。粒子径を下げることによって,全光線透過率を87%以上,ヘイズが2%以下など光学特性を向上できた(図1)。

 同ITOナノ粒子に樹脂バインダーを加えてフィルム上に塗布して透明導電フィルムとする。同粒子を使ったインクジェットプリンター用のインクも開発した(図2)。インク中でナノ粒子を分散させる技術にも同社の磁性体の技術を適用したとしている。

 光学特性が向上したことから,これまでスパッタリングによるITOが使われてきた用途を塗布型ITOに代替できると見る。同社が最も期待しているのが,曲げて使うフレキシブルタイプのタッチパネルである。スパッタリングで樹脂フィルム上にITOを製膜することも可能だが,曲げると割れやすいのでフレキシブル性には限界がある。塗布型ならば,5mm直径の円形状に曲げても耐えるという。タッチパネル以外では,電子ペーパー向けの電極も有望視している。価格は,「スパッタリングによるITOと比べてトントンか安くしたい」としている。