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今回公表した中級機
今回公表した中級機
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上記と大きさを比較
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本体の厚さを比較
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 「これを出さないようではマイクロフォーサーズシステム規格を作った意味がない――」。オリンパスがphotokinaに出展したレンズ交換式の小型高級機は,同社の新市場開拓に対する強い意欲の下で作られた。オリンパスイメージング SLR事業本部長の小川治男氏と,マイクロフォーサーズの規格策定の実務を担った同社 開発本部 開発企画部 開発企画グループ 課長の松澤良紀氏に話を聞いた。

―― モックアップを展示した狙いは何か。

 マイクロフォーサーズは何を実現できるのか具体的な形で示したかった。規格を発表してから当社には,小型機の発売に対する非常に強い期待の声が寄せられている。それに応えないわけにはいかない。ここまで小さくなれば,ユーザーは気軽に本機を持ち出せるようになる。女性が使う小さめのバッグにも楽に納まる。

―― モックアップの大きさはどのくらいか。

 外形寸法は120mm×65mm×32mm。ポケットに入れられるように,部品の実装方法を工夫した。体積は当社の小型一眼レフ機「E-420」の6割に当たる。

―― ヘアライン加工を施したステンレス製の筐体が,高級感をかもしだしている。黒一色の筐体に比べてとっつきやすさも感じさせる。このまま製品化するのか。

 これから詰めるべき内容がまだまだある。より良い外観デザインを目指して磨き上げたい。

―― いつ発売するのか。2009年中か。

 ハッキリとは明言できない。そうなるよう努める。

―― モックアップに装着した交換レンズは単焦点か。

 そうだ。小型の本体には単焦点品が合う。ズームするにはユーザーが被写体に近寄らなければならないが,単焦点ならではの美しい写真を楽しんでもらいたい。実際,ニーズは強い。主にE-420のユーザーに向けて発売した単焦点品は,供給不足でご迷惑を掛けたほど売れた。
 単焦点だけでなく小型の広角レンズやズーム品も発売していく。両面非球面のガラス・モールド・レンズを活用するつもりだ。

―― 単焦点レンズのネックは,その中に手ブレ補正機構を実質的に入れられないこと。本体内に同機構を備えて,この課題を克服するのか。

 コンパクト機からステップ・アップしようとするユーザーは,手ブレ補正の装備を期待している。その気持ちにしっかり応えていく。

―― 接眼して使うファインダーがない。

 本体背面の液晶モニターを見ながら撮る「ライブビュー」を楽しんでもらいたい。ただし,接眼して使うファインダーを望むユーザーもいるので,外付けの光学ファインダーを提供することを検討している。将来的にはEVF(接眼して使う電子ファインダー)を搭載した機種を別途,発売することを検討している。

―― オートフォーカスはコントラスト検出方式か。

 そうなるだろう。松下電器産業の「DMC-G1」を見れば明らかなように,コントラスト検出方式だから一眼レフ機で使う位相差検出方式より遅いとは限らない。コントラスト検出方式ならば,将来的には画像認識技術との組み合わせも可能だ。

―― 松下電器産業のように旧来の一眼レフ機のイメージを引き継いだ外観デザインを採用しなかったのはなぜか。

 当社は既に(マイクロフォーサーズではない)フォーサーズ機を三つ展開している(仕様がわずかに異なる機種も含めると四つ)。同じ規格を使っていても(既存のラインアップが少ない)松下電器産業とは,立場が異なる。

 今回,新たに中級機の外観を公開したように,当社はフォーサーズ機を今後,継続して市場投入する。マイクロフォーサーズ機も手掛けるので開発側としてはとても大変だが,マイクロフォーサーズ機ほど気軽に使えなくてもフォーサーズ機には,APS-Cサイズや35mmフィルム・サイズの撮像素子を用いた一眼レフ機より楽に持ち運べるといった特徴がある。

―― 中級機の概要を教えてほしい。

 当社最上位機の「E-3」と,E-420よりやや大ぶりながら本体内に手ブレ補正機構を備えた「E-520」の間を埋めることを意図した。2009年春には発売する。光学ファインダーに写る像はE-3ほど大きくはなく,筐体も防塵防滴機能を備えていない。しかし,オートフォーカスはE-3と同様に高速で,バリアングル・モニターもある。筐体変更などにより,重さは100g以上減るだろう。

―― マイクロフォーサーズ機の外形寸法についてもう一度,聞きたい。もっと小さくできるのではないか。確かに既存の一眼レフ機と比べると格段に小さい。ただ,撮像素子の光電変換部の寸法が4/3型よりもわずかに大きいシグマの「DP1」の方が,本体の外形寸法は少し小さい。

 DP1はレンズが交換できないので,小型化に有利な立場にある。そうした潔い割り切りを否定するつもりは全くないが,それでは同じ被写体でもレンズを変えることで,全く印象の異なる自分好みの写真を撮れるという楽しみを提供できない。

―― モックアップの厚さは32mm。これはおそらく本体の内部を広くメイン基板が覆うためだろう。仮にそうだとすれば,マウントや手振れ補正機構と厚さ方向で重ならないように,基板面積を減らせばまだ薄くできる。

 小型化できる余地はまだある。ただ,それには発熱量を抑えながら画像処理LSIの集積度を高めていくこと,そしてそのために時間と費用をかなり投下していくことが必要になる。

―― マイクロフォーサーズ機は動画撮影機能を備えるのか。

 もちろん,そうだ。

―― マイクロフォーサーズは動画の表現力を高める上でとても好都合な規格だと考えられる。既存の家庭用ビデオ・カメラでは撮像素子が1/6~1/3型と小さかったので,ボケ味を楽しめなかった。APS-Cサイズや35mmフィルム・サイズの撮像素子を使えば,今度は動きを追う動画としてはボケ過ぎで見にくかったり,合焦に時間がかかり過ぎたりする懸念がある。

 指摘の通りだ。開発の優先順位はあるものの,既存のビデオ・カメラにはなかった一味違う動画体験を今後,ユーザーに提供していきたい。