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 レンズ交換式カメラ「LUMIX DMC-G1」の商品企画者に,開発における注力点や今後の展望を聞いた(関連記事:松下,現行一眼レフ機を一部否定する意欲作を投入)。回答者は松下電器産業で一眼レフ機およびマイクロフォーサーズ機の商品企画を統括する房忍氏と,企画開発チーム 参事の井上義之氏である。

―― 技術面では何を重視して開発しましたか。

 第1は,ミラー・ボックスを取り払った上で光学ファインダーと比べて遜色ないEVF(電子ビューファインダー)を搭載すること。第2は,オートフォーカス(AF)にコントラスト検出方式を使いながら,位相差検出式並みの合焦速度を実現することです。EVFの精細度は,人間の眼における理論上の最大分解能に迫っています。精細度が高い液晶パネルは,開口率の低さから映像が暗くなりがちですが,そうした問題は今回ないと考えています。

―― AFの高速化は,どのように達成したのでしょうか。

 もともとコントラスト検出方式のAFは,撮影の失敗を抑制し印象深い写真を撮ることを強くアシストできる潜在能力を持っていました。具体的には,合焦精度が高い,測距点を増やしてもカメラ本体の大型化に無関係といった利点です。位相差検出式のようにAF用撮像素子を大型化して測距点を増やすわけじゃありませんからね。加えて,ユーザーが測距する位置や広さを自由に決められます。

 ただ,速度がネックだったのです。高速化は,レンズの制御信号・端子を増やす,撮影にも用いるMOSセンサの信号読み出し速度を高める,画像処理LSIの処理速度を引き上げる,交換レンズの機構部のがたつきを抑制する,といった工夫によって実現しました。

―― DMC-G1では,動画撮影機能をバッサリと捨てました。

 そのニーズには,次に投入する機種でしっかりと応えます(関連記事:「“一眼”で本当のハイビジョン」,松下が2009年春にAF機を発売)。

―― DMC-G1は,とがった特徴をいくつも備えていますが,単に価格を比べれば他社製品より高めです。低価格志向が強い海外市場を攻略するには,価格でも勝負する手があります。

 低価格化のリーダーになるつもりは,全くありません。私たちの目標は,2010年にデジタル一眼レフ機とマイクロフォーサーズ機を合わせた世界市場で,10%のシェアを取ること。性急にこの市場を寡占したいわけではありません。DMC-G1の価格は極端に高いわけでもありませんから,目標達成に向けて着実に歩めると考えています。

―― ドイツLeica Camera AGとの協業は,マイクロフォーサーズ機でも実施しますか。

 はい。今回発表した交換レンズ「LUMIX G レンズ」は,買っていただきやすい価格設定を重視しましたが,高画質を徹底追及したLeicaブランド品も市場投入するつもりです。

―― マイクロフォーサーズに基づいてLeica社の一部機種のようなレンジ・ファインダー機を作る考えはありますかPC Watchにおけるレンジ・ファインダーの解説

 交換レンズの選択肢が少ないことが問題ですね。望遠レンズを付けるとファインダーの中の像が小さくて見えにくく,超広角レンズを付けると撮影範囲がファインダーに収まり切らない。だから,レンジ・ファインダー機のユーザーは,本当にカメラが好きな人に限られる。一般的にはどうしても使いづらいカメラ・システムになってしまうんです。

―― それにしても,よくミラー・ボックスを外せましたね。ミラー・ボックスは高度なノウハウが必要な機構部品で,一眼レフ機事業における技術的な参入障壁でした(関連記事:一眼レフ以外の高級機を,誰が生み出すのか

 既に市場を寡占しているのであれば,ミラー・ボックスの廃止は「パンドラの箱」を開けることなのかもしれません。でも,私たちは後発。ユーザーを魅了できる可能性に賭けるしかありませんよ。

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