World Business Council for Sustainable Development(WBCSD:世界経済人会議)らは,環境技術に関する特許の開放に取り組む「Eco-Patent Commons」に,ドイツRobert Bosch社と米DuPont社,米Xerox社が参加したと発表した(発表資料)。今回の参加に伴い,3社はそれぞれ特許を開放している。

 Eco-Patent Commonsは,WBCSDと米IBM Corp.が,フィンランドNokia Corp.や米Pitney Bowes Inc.,ソニーと協力して2008年1月に設立した(Tech-On!の関連記事)。公開した特許が利用可能になることによって,研究者や企業,起業家による環境に配慮した製品やサービスの創出・開発などを促進することを目的としている。

 Bosch社が開放した特許は,主に自動車技術に関するもので,車両のエネルギー管理やエンジン管理向けの特許を含むという。これらの特許は,自動車の燃料消費量や排出ガスの低減,自動車からの廃熱の有効なエネルギー転換などに貢献するとする。

 DuPont社が開放した特許は4件。そのうちの1件は,特定の酵素を使って,リサイクルが不可能なプラスチックの一部を肥料に変えるという廃棄物削減技術に関するもの。この技術を使えば,より早く完全にプラスチックを分解することができるため,埋立地に残留しているプラスチックを減らせる可能性があるという。残りの3件の特許は,汚染を検出する発光技術に関わるもの。特許の対象となっている微生物が,汚染物質にさらされると発光し,汚染物質の存在を知らせる技術という。土壌や大気,水質環境のモニタリング,毒性のスクリーニング,および薬剤や農薬の開発・製造・発酵プロセスの管理に有効とする。

 Xerox社は,土壌汚染および地下水汚染の浄化の時間短縮を可能にする11件の特許を開放した。これらの特許は2相抽出法(2-PHASE Extraction)と呼ばれる技術に関わるもの。この技術を使えば,汚染現場の浅い層に存在する地下水に含まれる揮発性の有機溶剤を98%以上除去できるという。Xerox社は,2相抽出法を用いたシステムを使って,全浄化時間を最大80%削減できたとする。

 さらにソニーも,光ディスクから色素成分や反射膜の金属を回収するリサイクル技術に関わる特許3件を新たに開放した。

 日本IBMによれば,Eco-Patent Commonsの設立以来,特許を開放した各社に直接問い合わせが入っており,既に少なくとも3件の特許が活用されているという。