経済産業省は「コンテンツ取引と法制度のあり方に関する研究会」を立ち上げ,9月1日に第1回を開催した。このほど,開催趣旨と第1回の議事要旨が公開された(開催趣旨第1回の議事概要)。

 開催要旨によると,この研究会は「『コンテンツの創造と利用のサイクル』の好循環を実現すること」を目的に,「クリエーターから端末メーカーを含む産業の振興という総合的な視点から、コンテンツ取引と法制度のあり方について検討する」とする。「コンテンツ取引に係る法制度の見直しが様々な場で検討されている」が,「コンテンツの流通形態の多様化やコンテンツ管理技術の進歩といった環境変化を十分に踏まえた課題の分析」が行われていない,という問題意識に基づく。この研究会の構想に関しては,2008年8月に明らかになっていた(Tech-On!関連記事1)。

 この研究会は具体的に
 1.クリエーターの活動環境の整備
 2.多様なコンテンツの流通促進
 3.不正流通対策の強化
の三つの政策課題を検討対象とし,学識者、弁護士などの有識者で構成する。権利者やメーカー関係者など当事者の委員はいない。座長は商法の専門家である上智大学法学部教授の小塚荘一郎氏。また,経産省 商務情報政策局の各課の課長に加えて,総務省 情報流通行政局 情報通信作品振興課(後述のデジコン委の事務局を務める部署)の課長補佐がオブザーバーとして出席する。

 第1回の会合では,私的録音録画補償金制度などの制度,コンテンツ流通の阻害要因の検討,コピー制御技術の社会的な意義などについて検討され,「技術の進歩といった環境変化を踏まえつつ課題を整理することにより、関係者全てにとって利益となるような前向きな議論ができるのではないか」といった発言があった模様だ。

 研究会は今後,月2回のペースで開催し,年内のとりまとめを目指す。

 この研究会と似た問題意識を持った審議会としては,文化庁の文化審議会 著作権分科会の下部組織である「私的録音録画小委員会(録録小委)」や総務省 情報通信審議会の下部組織である「デジタルコンテンツ流通促進等に関する検討委員会(デジコン委)」がある。だが,録録小委における議論は権利者とメーカー,消費者系の委員それぞれの意見が錯綜して行き詰まり状態にあり(Tech-On!関連記事2),デジコン委における地デジ録画機器に向けた「法的エンフォースメント」の導入の議論は,メーカー系委員が強い反対の態度を崩さない状況にある(Tech-On!関連記事3)。

 経産省の研究会は,こうした状況を踏まえてスタートすることになる。