Barry Davis氏
Barry Davis氏
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 米Google Inc.や米Intel Corp.,米Comcast Corp.,そして米Time Warner Cable Inc.など,米国を代表する企業らが総額1兆円以上を投資するのが,米Clearwire Corp.が計画するモバイルWiMAXサービスである(Tech-On!の関連記事)。米Sprint Nextel Corp.が計画中だったモバイルWiMAXサービス「XOHM」を吸収し,全米最大規模のネットワーク構築を進めている。2008年9月から全米各地で順次,サービスが始まる予定だ。Clearwire社で製品企画を担当する,Executive Director of Product PlanningのBarry Davis氏に,全米でのサービス展開について聞いた。(聞き手=Phil Keys)

――モバイルWiMAXサービスは,どのような都市から始まるのか?

Davis氏 新生Clearwire社は,2008年第4四半期に誕生する。Clearwire社と,Sprint Nextel社傘下のXOHM事業部を合併する。まずは米オレゴン州ポートランド市や,米ジョージア州アトランタ市,米ネバダ州ラスベガス市,米ミシガン州グランドラピッズ(Grand Rapids)市でサービスを開始する予定だ。さらに,Sprint Nextel社のXOHMブランドでインフラ構築が進んでいた米メリーランド州ボルティモア市や,米ワシントン市,米イリノイ州シカゴ市でも,早ければ2008年9月からサービスが始まる。

サービス提供可能な人口数は,年内に合計2100万人に,そして2009年末までに6000万~8000万人に達する見込みだ。2010年末には,1億2000万~1億4000万人まで拡張する予定である。加入者の獲得目標は,2009年末までに130万人。Comcast社などのパートナー企業は,我々のサービスを異なるパッケージで再販売する。130万人の目標値のうち,30万人はこれらサービスの顧客になる見込みだ。

――どのようなサービスを想定するのか?

Davis氏  我々が実施するのは,固定および移動体に向けたデータ通信サービスである。音声サービスは対象としない。想定する機器の形態は,家庭でインターネット接続するためのアクセス・ポイントや,ノート型パソコンに接続するPCカード型モデム,ノート・パソコンやMID(mobile internet device)への組み込みである。このほか,マシン・ツー・マシン(M2M)への適用も想定する。将来は携帯電話機へのサービスもあり得る。

――米国では,Verizon Wireless社などがLTEによるデータ通信サービスを計画している。Clearwire社は,このような競合サービスをどう見ているか?

Davis氏  LTEは,まだ提案されているだけに過ぎず実態が無い。このため現状では,当社のサービスとLTEを比較するのは難しい。一般的に考えると,恐らくLTEは3Gの延長上のサービスになるだろう。

――モバイルWiMAXはLTEに勝てるのか?

Davis氏  米国のデータ通信市場の競争で,勝敗を決める大きな要素は周波数だ。WiMAXは2.5GHz帯を使うほか,将来は198MHz帯が使えるようになる。一方でLTEは700MHz帯だろう。198MHz帯を使えば,700MHz帯では実現不可能なサービスを実施できるかもしれない。

 WiMAXのサービスで我々は,「オープンネットワーク・モデル」を採用する。これは例えば,ユーザーがWiMAX対応のノート・パソコンを購入したら,サービス事業者と契約を結ばずともネットワークを利用できるというものだ。ユーザーの利便性は格段に向上するだろう。こうした点が,当社のサービスの強みになる。

LTEやWiMAXなど次世代通信に関する特集記事を,日経エレクトロニクス9月8日号に掲載予定です)。