図1 京セラ製「W64SA」の背面部を点灯させたところ。点灯できる色は赤,青,ピンク,黄色,緑の5色。携帯電話機の開閉時や充電時などに,2色を選んでイルミネーションを表示できる。加速度センサと連動しており,端末を素早く振ることでも表示できる
図1 京セラ製「W64SA」の背面部を点灯させたところ。点灯できる色は赤,青,ピンク,黄色,緑の5色。携帯電話機の開閉時や充電時などに,2色を選んでイルミネーションを表示できる。加速度センサと連動しており,端末を素早く振ることでも表示できる (画像のクリックで拡大)

 KDDIが2008年8月に販売を開始したauブランドの携帯電話機「W64SA」(京セラ製, Tech-On!の関連記事 )。この端末の特徴の一つは,イルミネーションを用いた「カラーセラピー」機能を搭載したことだ。この機能では,メイン・ディスプレイの背面側に搭載したLEDを点灯させることで背面部分に2色のイルミネーションを表示している(図1)。

 カラーセラピーに用いるイルミネーションを実現した技術のポイントを,京セラ通信機器事業本部の開発陣に聞いた。同社は,イルミネーション機能を実現するためのカギとして,LEDの実装と筐体カバーの成形の二つを挙げた。

液晶パネルのバックライト技術を応用

 まずは,LEDの実装方法だ。イルミネーション機能を実現するため,メイン・ディスプレイの背面部には四つのLEDを搭載している。発光方法については,「中小型の液晶パネルのバックライトに用いられる技術を応用した」(京セラ 通信機器関連事業本部 機構設計部の鈴村和弘氏)という。具体的には,発光部のエッジ部分に配置したLEDの光を導光板と反射板を用いて発光面積を広げる手法を採用する(図2)。LEDを発光部の直下に配置すると,「発光面積を拡大できないほか,発光部が厚くなってしまう」(同氏)からだ。発光部の外側は導光板を配置せず反射板のみを使うことで,「発光部分の端面がぼんやりと光るようにした」(同社 通信機器関連事業本部 国内商品部の辻村正典氏)という。

図2 W64SAのメイン・ディスプレイ背面部を分解したところ(下)。中小型の液晶パネルのバックライトに用いられる技術を応用した。実際の製品では,LEDの上に遮光テープを,導光板と反射板の上には拡散シートを張り付けている
図2 W64SAのメイン・ディスプレイ背面部を分解したところ(下)。中小型の液晶パネルのバックライトに用いられる技術を応用した。実際の製品では,LEDの上に遮光テープを,導光板と反射板の上には拡散シートを張り付けている (画像のクリックで拡大)

 発光部の厚さは「0.6mm程度であり,サブ・ディスプレイに用いる液晶パネルやモノクロ有機ELパネルの厚さと同じレベル」(京セラの鈴村氏)という。使用する導光板や反射板は,「液晶パネルに用いられる製品と同じ。特殊な材料を開発したわけではない」(同氏)。

筐体カバーは2色成型

 メイン・ディスプレイの筐体カバーは2色成型を採用する。筐体カバーのカラー・バリエーションは,ホワイト,ブラック,ピンク,イエローの4色(図3)。筐体カバーは,ブラックのみ透明性のある同系色の樹脂を重ね合わせている(図4)。その他の3色は,筐体カバーの外側に透明性のある樹脂を,内側に白色の樹脂を用いている。「白色の樹脂はLED光を透過するほか,筐体内部の部品が透けて見えてしまうのを防止できる」(京セラの鈴村氏)からだ。筐体カバーの色を濃くするとLEDを発光しても色が表示されない,筐体カバーの色を薄くすれば内部の部品や凹凸が見えてしまうなどの問題があったという。

図3 メイン・ディスプレイの筐体カバー(表)ホワイト,ブラック,ピンク,イエローの4色
図3 メイン・ディスプレイの筐体カバー(表)ホワイト,ブラック,ピンク,イエローの4色 (画像のクリックで拡大)

図4 メイン・ディスプレイの筐体カバー(裏)。筐体カバーの内側の樹脂は,ブラックのみ透明性の樹脂を採用,その他の3色は筐体カバーの内側には白色の樹脂を採用する
図4 メイン・ディスプレイの筐体カバー(裏)。筐体カバーの内側の樹脂は,ブラックのみ透明性の樹脂を採用,その他の3色は筐体カバーの内側には白色の樹脂を採用する (画像のクリックで拡大)

この記事を英語で読む