椎名氏はまた,デジタル・コンテンツ法有識者フォーラムが提出したと思われる意見についても触れ,「彼らの意見をヒアリングしなかったことを問題視しているようだが,許諾権の存在が流通の制限になったことはない,というのが当委員会の結論。ネット法の提案自体がそもそも検討に値しないレベル」と切り捨てた。ホリプロの堀義貴氏は,「一つの意見の中に何度も『自民党』という文言が出てくる。彼らはコンテンツを作りたいわけではなく,政治と結びついて何らかの利益を得ることを求めているだけなのではないか」と指摘した。

 椎名氏はさらに,「この意見では『ネット法』に賛同する放送事業者も存在するように書かれている」という点もやり玉に挙げた。もしそれが事実なら,放送局は場合によって,二つの立場を使い分けていることになるという指摘だ。この指摘に対して,テレビ朝日の福田氏は「放送局は誤解を受けやすい。我々がネット法の方針に賛成していることはない。裏でいろんなことに通じていることはない」と否定した。TBSテレビの植井理行氏も「椎名氏の懸念しているような事実はない」と補足した。

 堀氏はパブコメ全般に関する感想として,「自分たちの業界からの意見も含め,どのパブコメも自分たちの利益だけしか見ていないのが残念。どうすれば国益になるかという視点の意見がない。こうした場ではもっと大きな話をするべき」と述べた。

 日立製作所の田胡修一氏は,「JEITAじゃなくて日立の田胡です」と笑わせた後,「堀氏の意見に強く賛同する。今期の議論では,何のためのコンテンツ保護なのかという原点に戻って議論すべきではないか。目的は日本のコンテンツが世界で勝つためではないのか」とした。

 こうした意見に対して,日本アイ・ビー・エムの浅野睦八氏は「パブコメをあまり気にする必要はないのではないか」と発言した。「この場は他の場と違って,立場が異なるステークホルダーが多数集まって,オープンな環境で議論を作って来た。この結論を他の人に押しつけるわけにはいかないが,成果を主張するだけの価値がある」という考えからだ。

 浅野氏の意見に対しては主査の村井氏は,「パブコメを聞く必要はないという意味ではなくて,我々は議論の成果に自信を持つべきという意味と受け取った」とフォローした上で,「パブコメを得られるのはこうした場で議論するメリット」と述べ,議論を締めた。

 デジコン委の次回会合は9月下旬に開かれる予定だ。