電子ペーパーをはじめ,新規事業の開拓を積極的に進めているPrime View International Co., Ltd.(PVI)。このほど韓国のTFT液晶パネル・メーカーのBOE Hydis Technology Co., Ltd.の買収を完了した。Hydisの買収で手に入れたリソースを生かしながら,新体制の下で,どのように事業を発展させていくのか。PVI社PresidentのYS Fu氏に,同社の戦略を聞いた。(聞き手は,田中 直樹=Tech-On!)

PVI社 社長 YS Fu氏
PVI社 社長 YS Fu氏 (画像のクリックで拡大)

――BOE Hydis Technology Co., Ltd.を買収した狙いは。

 Hydisの買収によって,われわれは新たな生産能力,先進技術,顧客基盤の三つを手に入れることができました。

 HydisのTFT液晶パネルの生産能力は,われわれの4倍の規模があります。われわれは第2世代ライン1本しか持っていませんが,Hydisは第2世代,第3世代,第3.5世代の生産ラインをそれぞれ持っています。われわれのビジネスは成長し続けており,生産能力はいつも足りない状況です。そこで,Hydisの生産能力を活用していきます。

――Hydisから手に入れた“先進技術”や“顧客基盤”については,どのように生かしていくのですか。

 Hydisは広視野角技術「AFFS」のような優れた技術を持っています。この技術は,携帯電話機,小型ノートPC,航空機,自動車,産業機器,医療機器などの用途を想定しています。視野角が広く,半透過型と組み合わせることで太陽光の下でも鮮明な映像を見ることができます。

 また,Hydisは特殊用途の顧客も豊富に持っています。Hydisが経営上の問題を抱えていたことは顧客も知っており,現在Hydisへの注文は決して多くはありません。しかし,8月前半にわれわれの会長が日本と韓国を訪問して今後の事業運営について説明したことで,Hydisの顧客の理解も進み,これから注文が増えると見ています。2008年末までに90%を超える工場稼働率を達成することを目指しています。

――2008年下期は,PVIにとって,どのような位置付けの時期になると考えていますか。

 2009年以降の飛躍・発展のために,2008年下期は非常に重要な時期となります。Hydisを利益の出せる会社にしたい。HydisとPVIには,それぞれ良いところがあります。それぞれの特徴を生かして相乗効果を発揮し,「1+1」を「2」以上にすることを狙っています。

 そのためには,両社の製品,販売チャネル,顧客,市場を整理・統合して,両社の利益を最大化する必要があります。さらに,HydisとPVIの液晶モジュール生産をすべて中国・揚州に統合したいと考えています。モジュール組立の作業者,モジュール部材メーカー,顧客の組み立て拠点,技術を統合し,効率化することによって,収益性を高めるのが狙いです。

 このような整理・統合を実現できれば,両社の優位性を生かすことができます。その結果,電子ペーパー事業も急速に拡大することができるでしょう。他社に先駆けてこの市場に参入したことで,今後も他社に先行して実現できることがたくさんあります。また,今後はHydisの生産能力も活用できることから,顧客に多種多様なソリューションを提供できると確信しています。

――電子ペーパー事業の計画は。

 2008年は,2007年の3倍を超える出荷数量が期待できます。つまり,電子ペーパーの成長率は200%を超える見込みです。2009年,2010年も倍々ゲームで増えていくでしょう。3~4年で出荷数量は1ケタ増える勢いです。電子ブック,ノートPCのサブパネル,電子棚札,スマート・カード,HDDのインジケータなどの用途がどんどん増えると見ています。

このインタビューの詳細は,『NIKKEI FPD 2009 産業動向編』(10月29日発行)に掲載しています。