2007年に第3世代の液晶パネル生産ラインを相次いで売却し,工場の稼働率上昇とコスト削減,収益性の改善を進めてきたHannStar Display Corp.。同社はこの1年,「5.3世代」と呼ぶ1200mm×1300mm基板の生産ラインで,モニター向けに17型や19型の液晶パネルを中心に生産してきた。しかし,モニター向けパネルは大型化やワイド化が進んでおり,17型や19型の収益性にも陰りが見える。こうした状況下で,同社は中小型パネル事業に活路を求める。同社の戦略を,Vice President, Company SpokespersonのChin-Hao Chou氏に聞いた。(聞き手は,田中 直樹=Tech-On!)

HannStar社 副社長  Chin-Hao Chou氏
HannStar社 副社長  Chin-Hao Chou氏 (画像のクリックで拡大)
――中型液晶パネルの生産を始めましたね。

 これまでモニター向け液晶パネルの生産に偏っていた事業構造を改善し,5~10型の中型パネルの生産比率を大幅に増やそうとしています。中型パネルの生産は2008年3月に開始しました。2008年第2四半期の生産枚数は200万枚,全社売上高に占める中型パネルの比率は7%に達しています。第3四半期は生産枚数を500万枚に引き上げ,全社売上高に占める中型の比率を15~20%に増やしていく考えです。製品群を広げることによって,事業を安定化しやすくなります。

――なぜ中型パネルに着目したのですか。

 われわれの「5.3世代」ライン(ガラス基板寸法1200mm×1300mm)は,他社の第5世代ライン(ガラス基板寸法1100mm×1300mm)に対して中型パネルの生産効率が特に高く,コスト優位性を発揮できるからです。例えば8型ワイド・パネルについていえば,第5世代ラインでは55面取りなのに対して,われわれの5.3世代ラインではその1.2倍の66枚を取ることができます。10型ワイド・パネルでは,第5世代ラインの35面取りに対して,われわれの5.3世代ラインでは1.29倍の45面取りが可能です。

 しかも,中型パネル市場は高い成長性を期待できます。成長が鈍化してきたモニター向けパネル市場とは対照的です。ミニノート・パソコン,デジタル・フォト・フレーム,PND(personal navigation device),インフォメーション・ディスプレイなど多種多様な市場があり,すべて伸びています。

――5.3世代ラインの生産能力は。

 2008年に入って,5.3世代ラインの生産性を改善し,ガラス基板投入能力を拡大しました。2007年の投入能力は12万シート/月でしたが,2008年3月末までに生産ラインを改良し,2008年第2四半期に13万シート/月へ投入能力を高めています。

――中型パネルの生産では,液晶モジュール工場の整備も重要になります。

 中国・南京に液晶モジュール工場を建設しました。2007年に着工し,2008年6月に完成したところです。2008年末までに200万枚/月の生産能力を確保し,2009年には250万~300万枚/月へ引き上げる計画です。われわれの3.5世代ラインで生産した中型液晶セルのうち約半数は,この南京の液晶モジュール工場で組み立てます。残りは,外部にモジュール組み立てを委託します。

――2009年の戦略は。

 プロダクト・ミックスの改善に賭けます。われわれの液晶パネル生産能力は現在の13万シート/月が最大で,これ以上増やすことは難しいのが現状です。液晶パネルの市場環境を考えると,新規投資をする時期ではありません。既存の5.3世代ラインのコスト優位性を発揮しやすく,しかも大きな市場成長が期待できる中型パネルの生産比率を拡大するプロダクト・ミックスの改善に注力します。

 具体的には,中型パネルの生産比率を数量ベースで50%に引き上げます。13万シート/月の生産能力のうち,半分の6万5000シート/月を中型パネルに,残り半分の6万5000シート/月をモニター向けパネルに割り当てます。これにより,中型パネルを550万枚/月の規模で生産し,数量ベースで世界トップとなる30%の市場シェアを取る計画です。

このインタビューの詳細は,『NIKKEI FPD 2009 産業動向編』(10月29日発行)に掲載しています。