液晶モニターのOEM(相手先ブランドによる生産)で世界第2位という,ばく大な需要を持つ自社のセット部門に液晶パネルを供給することで急成長を続けるInnolux Display Corp.。同社の液晶パネル生産ラインは,市況が急速に悪化している現在もフル稼働を続けている。中核事業であるセット部門を強固な顧客基盤としてパネル需要を確保し,さらに内製パネルのコスト競争力をセットの強みとする。こうした独自のビジネス・モデルを「モニターだけではなくテレビにも広げる」と,同社Chief Financial OfficerのThomas Hsu氏は意気込む。(聞き手は,田中 直樹=Tech-On!)

Innolux社 CFO Thomas Hsu氏
Innolux社 CFO Thomas Hsu氏 (画像のクリックで拡大)

――液晶パネルの市況が急速に悪化しており,減産を余儀なくされているパネル・メーカーも出てきています。

 液晶パネルの市況が変調を来しているのは指摘の通りです。6月下旬から液晶モニターの在庫が顕著になり,パソコン向け液晶パネルの価格が下がり始めました。液晶パネル専業メーカーは減産,生産調整を続けています。しかし,われわれは減産を実施していません。稼働率100%のフル生産を続けています。われわれは液晶パネル専業メーカーとは異なるビジネス・モデルを採っているため,パネルを減産する必要はありません。

――なぜ,減産する必要がないと言えるのですか。

 われわれはモニター・セットのOEM会社です。われわれのモニター事業では,モニターのOEMに必要な液晶パネルの一部を内製し,その他を外部のパネル・メーカーから購入しています。2008年は,われわれが生産するモニター全体の約30%に自社製の液晶パネルを使い,残りの約70%には他社から購入した液晶パネルを使う計画です。

 2008年,われわれは3500万台の液晶モニターの出荷を計画していますが,われわれのモニター向け液晶パネルの年間生産能力は900万枚です。つまり,われわれのモニター向けパネルの生産能力は,自社の需要量の約30%に過ぎません。仮に2008年の液晶モニター出荷台数が3500万台を下回ることになった場合は,外部から購入する液晶パネル枚数を減らします。自社の工場から900万枚の液晶パネルを調達する計画は変わりません。われわれにとって,液晶パネルを減産する必要はないのです。むしろ稼働率100%のフル生産を続けて,900万枚のパネルをしっかり生産する必要があります。2009年も液晶モニターの出荷台数を増やしていきます。4500万台以上の出荷を計画しています。

――液晶パネルの増産も必要になりますね。

 はい。そこで,第6世代の液晶パネル工場を現在建設中です。この第6世代ラインは2009年下期から量産を開始する計画です。ガラス基板寸法は1500mm×1850mmです。生産能力については,9万シート/月にすることも検討しました。しかし,現在パネル価格が低下していることから,6万シート/月の規模から稼働を開始する予定です。

――テレビ分野への取り組みは。

 この第6世代ライン建設は,液晶テレビのOEM事業への参入を視野に入れたものです。液晶モニターの生産拡大に対応することだけが目的ではありません。生産能力全体のうち70%をモニター向けパネル,30%をテレビ向けパネルの生産に充てる予定です。両方の液晶パネルを効率良く生産できるように,第6世代の1500mm×1850mm基板を選択しました。22型ワイド,26型ワイド,19型ワイドのモニター向け液晶パネル,および32型と37型のテレビ向け液晶パネルを中心に生産していきます。

――液晶テレビのOEM事業はいつから始めるのですか。

 2008年第3四半期に開始する計画です。最初は外部から液晶パネルを購入します。その後は,液晶モニターのOEMと同様に,OEMに必要な液晶パネルの一部を内製し,その他のパネルを外部のパネル・メーカーから購入していく方針です。最終的には,液晶テレビのOEMに必要な液晶パネルのうち40%を内製し,60%を外部から購入するようにしたいと考えています。これは,液晶モニターのOEM事業も同じです。

――液晶テレビのOEMに必要な技術や技術者は,どのように準備するのですか。

 例えば,既存のテレビ・メーカーの技術や技術者を導入することも考えています。OEM事業は,ゆくゆくは設計や製品開発まで手がけるODM事業にシフトしていくものです。従って,技術や技術者を準備することは重要だと認識しています。

このインタビューの詳細は,『NIKKEI FPD 2009 産業動向編』(10月29日発行)に掲載しています。